三章 法国の危機と勇者の過去
第49話 聖女様、快楽に堕としちゃいました。
エルフの森から帰還して、早一週間が経った。その間、ルークはと言うと。
「はぁ、眠い」
大きな欠伸と共に、ベッドから体を起こした。
帝都の郊外にある小さなログハウス。ルークの住む家だ。
二階のベッドルームを出て、リビングへと向かうと。
「おはよう、ジンパチ」
先に起きていたミリーダが四人がけのテーブルの一席に座って、湯気の立ち上るマグカップを啜っていた。
「おう、おはよう」
中身は恐らくホットミルク。
ルークも椅子に腰を下ろして、体を伸ばした。
残念ながらと言うべきか、小さな休暇も昨日で終わりだ。
「ねえ、ジンパチ」
「なんだー? ミリーダ」
「おはようのキスしてない」
さも当然のことのように言ってきた。
「そりゃ、そういう関係じゃないからな。俺達」
「昨日はあんなに激しかったのに」
「やめろやめろ、してないって」
「むぅ、最近ルークが私に冷たい」
ずずいっとジト目のまま、ミルクを飲むミリーダ。
なんとも気まずい空気の中を切り裂くように二階からドタバタとした足音が響いた。
「うぅ、誰か水を入れてもらえんか?」
「「……」」
降りてきたのは、この前の一件以降仲間になった女侍のギンだ。
昨日の夜から何処かに出かけていたようだったが、顔色を見るに近くの酒場に行っていたのだろう。
「ほら、水」
「すまぬ、もう酒はこりごりじゃ……」
三日前も同じことを言っていたような気がするが……。
「ふん、そんなになるなら飲まなきゃいいのに」
ミリーダの言葉はこの場で何より真っ当だ。
「お主も大人になれば分かる。ミリーダよ」
コップの水を飲み干して、ギンは体を伸ばした。
「さて、今日は仕事じゃの? 主人様よ」
「ああ。二人はレイズに呼ばれてるんだろ?」
昨日の夜、レイズからの早馬が届いた。どうやら、何か起こったらしい。
「うむ、お主もよな?」
「うん、呼ばれた」
二人にも協力を仰いでいるあたり、中々事態は深刻なのかもしれない。
「ジンパチは今日何をするの?」
「本業だよ」
ここ最近、あまり出来ていなかったから忘れそうだったが。
「──今日は、拷問の仕事だ」
***
「お疲れ様です、ルーク殿」
「そう畏まらないでくれ」
昼前、ルークが向かったのは、帝都の城門付近にある地下牢だ。
「それで、今回は誰を尋問しろって?」
石畳の階段を降りながら、ルークは隣の衛兵に尋ねる。
「奥の牢屋に入っている者です。入国の目的とその理由をお尋ね下さい。また、ここから先、我々には立ち入るなと命が降りていますので、あとはよろしくお願いいたします」
「妙に、厳重だな」
「ええ、間違っても中の人物を口外してはいけないとの命を受けておりまして」
「ほーん」
ルークは衛兵と別れ、一人地下牢の廊下を進む。そうして、奥の地下牢へと。
そこにいたのは。
「……修道服?」
地下牢の小さな窓から伸びた一筋の光を浴びた金髪の少女。
まさしくその姿は。
「──どちら様、でしょうか?」
聖女。そう言うのがしっくりくる。
「拷問官だ。あんたを拷問するようにって、依頼を受けててな」
「拷問? わたくしを?」
きょとんとした顔をする少女。状況を理解してないらしい。
「まあ、痛めつけるとかじゃないから安心していい。ただ、少しだけ……」
ルークは扉を開き、牢屋に入ると、少女の頬に手を触れる。
「少し、気持ちよくなるだけだ」
「っ!? これはっ!?」
途端に、少女はルークの手を振り払い、ゆらゆらと背を壁に預けた。
「わたくしは、主にこの身を捧げたのです。ですから……ひっ、んん゛っ」
「へぇ、そうなのか」
「で、ですからっ! 屈しませんっ!」
紅潮した頬、堪えるように締め結ばれた形のいい唇。
聖女だからと言って、身体機能には逆らえない。
ゴッドハンドは、心の壁や理性すらも貫通するのだから。
「屈さない、か。なら、試してみよう。俺の攻めを……20分間受けて、お前が一度も果てなければ、解放してやる」
「い、言いましたわね」
強がっているのは、一目瞭然だった。
とはいえ、そう言ったからには、境地とやらを見せてもらおうではないか。
……
…………
「っ! ダメ……もうっ!」
勝負開始から、十五分。
「……え、えーとそろそろギブアップとか、どうだ?」
「わたくしは、まだ……屈しておりません」
「お、おう」
牢の一角に作られた簡易的なベッドの上。座ったルークの膝の上、聖女はもう五度も体を震わせて、果てていた。
「な、なら、続ければいいのか?」
「無論、です」
もはや、拷問と呼べない気もするが……まあ、こちらとしても美女の体を好き放題できるのは、悪くない。
ルークはまた指を修道服の隙間に差し入れると、その体を緩やかに撫で回す。
「んんっ」
幾度となく、達したことによって、その余韻がまだ残っているのだろう。
聖女はまたもすぐに。
「あぁ゛っ!」
しなやかな体を跳ねさせて、果てた。
「えーと、そろそろ入国の……」
流石にそろそろいいだろうと、質問をしようとするルーク。
「……わたくし、確信致しました」
「え、何を?」
「まさしく主の技……」
とろんと溶けたアイスクリームのような悦に満ちた目を向けてくる少女。
「噂は、誠でございましたぁ」
振り返り、抱きついてくる。そして。
「どうか、我が故郷。法国を魔族の手からお守りいただけないでしょうか?」
「……え?」
────
あとがき
お読みいただいてありがとうございます。
これからも頑張って続きを書いていきますので、作品フォローや星レビューを付けて応援していただけると、とても嬉しい限りです。
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