第11話  百合勃発? ヤンデレ暗殺者VSドM騎士

 ダンジョンからの帰り道。

 森の中。ルーク用のテントと、ミリーダとアテナ用のテントを張り終わり、例の如く野宿の準備が済んだ頃、ミリーダが声を掛けてきた。


「んー?」


 ルークは先程、捕獲した鹿の肉をぶつ切りにしながら振り返る。


「あの雌豚。一度、私が分からせてあげる」


「え、なんですか急に」


 変な敬語が出た。


「だって、あれはジンパチのペットなんでしょ?」


 あまりにも真っ直ぐな目で言ってきた。

 どうにも、ルークは否定しきれず……。


「ま、まあ、そんなとこだな?」


「だよね。ジンパチの恋人は私だもんね。うん、うんうんうんうん……」


 一人、濁ったような目で頷き続けるミリーダ。

 いや、怖いんだが。


「そ、それで何が気に入らないんだ?」


「言葉遣いも、態度も全然ダメ。あんなにふざけた態度許せない」


「え、えぇ。そ、そう……か?」


「そもそも、ジンパチを助けていいのも、助けるのも、全部恋人である私の役目だもの」


 嘘だろ。この人、勝手に恋人を自称するだけじゃ飽き足らず、謎のルールまで作り出しているのだが……。


 これには流石のルークも恐怖を感じていた。


「……分からせるってどうするつもりだ?」

 

「決まってる。教えてあげるだけ。ジンパチの隣にいるには何が必要なのかを」


 え? 逆に何が必要なのか教えて欲しいくらいだ。


「詳しく言うと?」


「──〇〇○ばきゅん××ばきゅんする」


「む、酷いな」


「だって、自分の立場を理解していないもの。本当なら○○○○ばきゅんして、△△△ばきゅんしてもしたりないのよ」


 もう、そこまで行くと人に対する行為ではない。拷問官という職業を仰せつかったルークですらもそう思った。


「何か問題ある?」


「え、えーと」


 ここで何か言い返せば、とんでもない事をされそうだ。


「そ、そうだな。とりあえず、任せる」


 触らぬ神に祟りなし。悪いが、今日一晩はアテナに割りを食ってもらうしかないようだ。

 自己保身に走ったルークは、大人しく夕飯を食べ終えた後、テントに篭ることにした。


***


「ねぇ、雌豚」


 時は、日付を跨いだ頃。

 ついに、ミリーダが行動に移したようだった。


「な、なんだ? どうかしたのか?」


 テント越しに聞こえるアテナの声は少し動揺していた。理由は分からない。もしかすると、ミリーダから何かを察したのかもしれない。


「雌豚は、ジンパチのこと。どう思ってるの?」


「ひっ! な、なぜ、太ももを撫でるっ!?」


 ふむ。正直、とても興味深い状況のようだ。

 ルークは隣のテントで聞き耳を立てながら思っていた。


「敏感。ほんとに王国の騎士だったの?」


「と、当然だっ! 愚弄するつもり……ひゃうっ!?」


「濡れてる。淫乱ね」


 おぉ。凄い。本当どんな状況なんだ。


「触……るなっ」


「嘘、本当はもっと触って欲しいんでしょ? 質問に答えて? 雌豚とジンパチはどんな関係?」


「そ、それは決まっている! 奴は私の敵だっ!」


「ほんとに?」


「ああ! 誓っても……んっ!? やめっ!?」


 くちゅり。そんな水音が反芻されて、聞こえてくる。


「嘘。だって、ここはこんなになってるもの」


「……あっ! んんっ!!」


 アテナの声は次第に、艶やかに染まっていく。まるで、体は快楽を受け入れながらも、心の何処かでは耐えようともしているような。


「で、ジンパチをどうするつもり? 不意をついて殺す?」


「それっ、は……っっっ!! その指っ! 止めてぇぇ」


「ジンパチほど上手くはなくても、私は女。どこが良いのかくらい分かってる」


「しゅ、しゅごすぎりゅぅぅ!」


 ……うん。寝れない。というか、寝れる気がしない。まじで何が起こっているんだ?

 ルークは鼻から息を吸っては吐いて、平静を保とうと固く瞼を閉じる。


「なに? もう限界? いいよ。とりあえず、一回」


「くぅぅぅ!! っっっっ!!!」


 テントが小さく揺れる音がした。まるで、震える手で掴んだような。


「ほら。続けるよ。それとも、こっちの方がいいの?」


「ま、待って。そっちは本当にぃぃぃ!!」


「胸。無駄に大きい、私なんかこんなに平たいのに」


「だめっ! ほんとにぃ! これ以上はぁ!」


「いや。貴女がジンパチのペットになるって言うまで、続けるから」


「いやぁ、もう無理ぃ」


 もしも、ここが宿屋ならば、追い出されてるだろうな。それくらいに、アテナの嬌声は大きく高い。


「ほら、こっちの穴も」


「いやぁぁぁぁ!!! お゛っ!!」


「ほら、雌豚……ん? どうかしたの?」


 急に、声が聞こえなくなった。


「……失神しちゃったんだ。弱いね」


 え? すごくね?

 ゴッドハンドの肩書きも返上かもしれない。

 ルークは少し戦々恐々になりながら、寝返りを打つ。


 とはいえ、これでやっと落ち着いた。何があったのか気にはなったが、睡眠の方が大切なはずだ。

 ルークがそう思った矢先だった。


「ねえ、ジンパチ」


 テントの入り口に人影が映る。


「な、なんでしょうか?」


「……その、私。もう限界かも」


「え?」


 とろんと蕩けた瞳で、ミリーダは息を切らせ、テントの中に入ってきた。

 息は上がり、頬は紅潮。その匂いはどこか、胸をざわめかせるフェロモンのような風味を帯びていた。


「ちょ、おま」


「雌豚を、いじめてたら……ほら」


 ミリーダの太ももは、液体が伝っていた。

 うん。そういうことね。


「──次は、ジンパチが私を……いじめて?」


 夜は深く、闇に染まっていく。

 静寂を保つ森の一角には、日が登るまでの間。少女の官能的な声が響き渡ったのだった。



────


あとがき


お読みいただいてありがとうございます。

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どうぞ、よろしくお願いします!


 


 


 

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