海岸

 あるとき実家のアルバムを整理していたら、そのときぶれた写真を見つけた。そこには海岸にそっと花が咲いていた。


 その写真を見て思い出した。


 小さなわたしは毎年家族と海水浴に行っていた。そのとき海水の中に鮮やかなピンク色の花が咲いていた。


 その頃わたしは親の真似をして写真を撮ることが好きだった。そのため、わたしは思わず写真を撮った。そしてその花をそっと触ったらシュッと花を閉じ、蕾になった。


 一連の事を見ていた親はそれがイソギンチャクだと教えた。


 その頃のわたしは家族みんな大好きで、特に親が好きで好きで仕方なかった。だから褒められたくて妹に構う親に甘える事を我慢した。


 我慢のしすぎでつらくなると海の華を思い出した。あの頃の幸せを思い出して生きていくために。


 そのうち海の華は死へのストッパーになっていった。死を忘れるには自分の世界に入ると心地よかったから、海の華はきっかけのようなものだ。


 いつか私が死ぬときには天に昇らず深く海の底に沈んで、海の華に囲まれたいと願いながら今を生きていく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

海の華 とんぼ @himooka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ