革命なう

風宮 翠霞

革命なう

「な……なんで、お前ら……」


俺は、呆然ぼうぜんとした。

二十年来の親友達……兄弟のように育ってきた三人の親友が、俺の前に立ち塞がったからだ。


あと一歩で、俺は上位階級の人間に仲間入りするはずだったんだ。

それを……親友達は、ぶち壊した。最悪のタイミングでだ。


「ごめんね……でも、仕方ないじゃん?」


奏多かなたが、弱々しく笑う。


「まぁ……諦めてくれ」


研二けんじが、項垂れる。


「君は、強すぎたんだよ……僕達には、こうするしかなかったんだ」


康二こうじが、申し訳なさそうにしながらも俺を真っ直ぐに見据える。


「なんでだよっ!?なんで今、このタイミングで……革命なんて起こすんだよ!!

もう少しで、俺は……」


「だからじゃん、あきら


「はっ……?」


奏多が言っている意味が、わからなかった。

いや、わかりたくなかった。


「このタイミングだからこそ、意味があるんだよ……いくら晶でも、もうどうしようも出来ないこのタイミングだからこそ、晶を止める為に協力出来たしね」


嗚呼、最悪だ。勝てない……。

三人は、一人だけでも強いんだ。それを、俺は運だけでなんとかここまでやって来たのに……手を組まれたら、俺は終わりだ。


「……さすが、だなぁ。本当に、お前らは強いよ……」


もう今の俺の手持ち手札カードじゃ、もうどうしようもない。詰みだ。


「ごめんな。お前は、強すぎたんだよ」


「ははっ……」


俺は、力無く笑った。

大事な勝負に勝てなかった俺が、最強のお前に強いと言われる日が来るなんて……。


今日は、最悪で最高の日だな。

俺は、静かに手に持っていたものを下ろす事で……この勝負ゲームを降参する事を、三人に示した。







「っしゃぁ!!これで俺が三回連続で大富豪だいふごうじゃ〜!!」


七回目のゲームを制した研二が、両手を上げる。

降参した俺は、また最下位だった。


「あ〜!!もうっ!!また研二の勝ちだぁ……」


最後に一騎打ちをしていた康二が、持っていたカードを机に叩きつける。

いや、それ俺のトランプだからね……?

大切にして……?


「疲れたぁ……。もう大富豪やめよう……僕が払うのでいいから……」


惜しいところで三番手だった奏多は、もう机に突っ伏してしまった。

彼は今最下位だ。


「じゃあ、奏多の奢りでさっさと酒飲もうぜ……」


ちなみに俺が下から二番目。

さっきので革命がなくて勝ててたら、二位になれたんだけどなぁ……。


九回大富豪をして、一番多く負けた奴が他の全員に地酒を奢るという、何気ない旅先での賭けが発端だったが……勝負が思ったよりも白熱したせいで、七回もやると全員がぐったりし始めていた。


あと二回大富豪をやるのはしんどい。

本人が奢るって言ってるなら、もうそれで良いのでは……?


「よしっ!!そうと決まれば買いに行くぞ〜!!奏多だけ財布持って行けよ!!」


「おー……ゴチになりまっす!!」


「わかってんじゃないか。感謝しながら飲め」


「お前が負け続けたから奢る羽目になってるんだけどなぁ?」


「うっせぇ黙れこの大富豪が。一番の金持ちなんだからお前が払えばいいのにな?」


男四人、ワイワイと騒ぎながら部屋を出てホテルの近くのスーパーまで地酒を買いに行く。


何気なくスマホを覗くと、研二と康二の二人のLINEストーリーが更新されていた。

二人とも同じ文章だ。


「革命なう」


俺はその瞬間、後で二人を殴る事を決めた。




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