第二十四話 何だよ、それ

次の日、ケンジは学校で親友のミカに呼び出された。放課後、彼女はケンジを校舎裏に連れて行き、少し困った顔をして彼に向き合った。


「ねえ、ケンジ。最近元気ないみたいだけど、大丈夫?」とミカが心配そうに尋ねる。彼女はいつも明るく元気な性格だが、今日はその顔にも少し影が差していた。


ケンジは一瞬ためらったが、結局ミカにも自分の悩みを打ち明けることにした。「実は、ナオとマナ、両方から告白されてさ…正直、どうしたらいいのか分からないんだ」


ミカは驚いた顔をしてケンジを見つめたが、すぐに納得したように頷いた。「ああ、そういうことか。だから最近、ナオもマナも様子が変だったんだね」


「俺、本当に二人のことをどう思ってるのか自分でもよく分からなくて。友達として大切な存在なんだけど、恋愛となると…」とケンジは言葉を濁し、ため息をついた。


ミカはしばらく黙って考えた後、ふっと笑顔を浮かべた。「ケンジ、もしかして、恋愛に対してあんまり自信がないんじゃない?」


「自信がないというか、どうやって向き合ったらいいのかが分からないんだ」とケンジは正直に答えた。


「それなら、焦らなくてもいいと思うよ」とミカは軽い調子で言った。「恋愛ってさ、答えを急いで出すものじゃないでしょ?むしろ、ちゃんと自分の気持ちがわかるまでじっくり考えるべきだと思う」


「でも、それって二人を待たせることになるし、申し訳なくて…」とケンジは弱々しく言う。


「そんなことないよ」とミカは力強く否定した。「ナオもマナも、きっとケンジの気持ちがちゃんとわかるまで待ってくれると思う。それだけ君のことを大切に思ってるからこそ、告白したんだから」


ミカの言葉は、ケンジの心に少しだけ安心感をもたらした。彼女の冷静で的確なアドバイスが、今のケンジには何よりもありがたかった。


「ありがとう、ミカ。少しだけ気持ちが楽になった気がする」とケンジは感謝の言葉を口にした。


「どういたしまして!」とミカは明るく笑って、ケンジの背中を軽く叩いた。「それに、恋愛に迷ってるケンジの姿を見るのも悪くないかもね。普段は頼りがいがあるのに、今はちょっと情けない感じで可愛いじゃん!」


「何だよ、それ」とケンジは照れくさそうに笑ったが、その笑顔には少しだけ希望の光が戻っていた。


ミカとの会話を終えたケンジは、自分の気持ちをじっくりと見つめ直す時間が必要だと再認識した。焦ることなく、ナオとマナに対して真摯に向き合う決意を少しずつ固めていった。

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