第十三話 深呼吸をして。
――翌日、ケンジはナオに告白することを決意し、その準備を進めていた。ナオの気持ちはまだわからないが、自分の想いを伝えずにはいられなかった。昼休み、ケンジは教室を飛び出してナオのいる教室へと向かった。
ナオの教室の前に立ったケンジは、心臓が激しく鼓動しているのを感じながら、深呼吸をして心を落ち着けようとする。教室の中にはナオとその友人たちが楽しそうに話している姿が見えたが、ケンジは意を決して声をかけた。
「ナオ先輩、少し話がしたいんですが、いいですか?」
ナオは少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに笑顔でうなずいた。「もちろん、いいよ。ちょっと外に出ようか」
二人は廊下を歩き、人気の少ない場所まで移動した。ケンジは緊張で体が固まっていたが、ナオの優しい表情が少しだけ彼を安心させてくれた。
「ナオ先輩、実は…俺、ずっと前から先輩のことが好きでした」とケンジは一気に言葉を吐き出した。
ナオは一瞬驚いたような表情を見せたが、やがて静かに微笑んだ。「ありがとう、ケンジ君。そんなふうに想ってくれてるなんて、すごく嬉しい」
ケンジはナオの反応を見て、少し希望を抱いた。しかし、次のナオの言葉がケンジの胸に重くのしかかった。
「でもね、今はまだ、私自身の気持ちがよくわからなくて…ごめんね。ケンジ君のことは大切な後輩として思ってるんだけど、それ以上の気持ちになるかどうか、自信がないんだ」
ナオの言葉にケンジは思わず肩を落としたが、それでも笑顔を作って答えた。「わかりました。俺、ナオ先輩の答えがどうであれ、先輩が好きなことに変わりはありません。でも、もし気持ちが変わったときには、俺に教えてください」
ナオは優しく微笑んでうなずいた。「ありがとう、ケンジ君。あなたって本当に優しいね」
告白は成功しなかったが、ケンジの気持ちは不思議とスッキリしていた。想いを伝えたことで、一歩前に進んだ気がしたのだ。
その日の放課後、ケンジは校庭で一人、ナオとの会話を思い返していた。そんな時、突然後ろから声をかけられた。
「お前、ナオ先輩に告白したんだろ?」
振り返ると、そこには同じ一年生の男子、アキラが立っていた。アキラはクラスでも目立つ存在で、何事にも冷静でクールな印象を与える少年だった。
「そうだけど…どうして知ってるんだ?」とケンジは少し警戒しながら尋ねた。
アキラは少し笑いながら答えた。「あんな場所で告白するなんて、お前も大胆だな。まあ、俺もナオ先輩のことが好きだから、お前がライバルってわけだ」
その言葉を聞いて、ケンジの胸に再び火がついた。ナオへの気持ちは簡単には諦められない。彼女の隣に立つためには、アキラとの真剣勝負を避けては通れないのだ。
「負けないぞ、アキラ」とケンジは力強く言った。
アキラは少し驚いた顔をしたが、すぐに微笑んで言った。「その意気だよ、ケンジ。負けたくないなら、お互い全力で頑張ろうぜ」
二人の視線が交錯し、火花を散らすような瞬間が訪れた。これから始まる恋のバトルに向けて、ケンジは新たな決意を胸に抱いた。
これからの高校生活は、ただの青春では終わらない。ナオへの恋心、ミカの友情、そしてアキラとのライバル関係――すべてがケンジをさらに成長させていく。
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