第九話 告白

ナオがカズヤと話していたあの日以来、ケンジの心はざわついていた。ナオとカズヤの間に何があるのか、自分が知らない何かを共有しているのか。その疑問は、日を追うごとに彼の心の中で大きくなっていった。


ある放課後、ケンジはカズヤに呼び出された。屋上で待っていると、カズヤがいつもの軽い笑顔ではなく、真剣な表情でやって来た。その顔を見た瞬間、ケンジは何か重要な話があることを悟った。


「ケンジ、今日は大事な話があるんだ」


カズヤは少し息を整えた後、ゆっくりと口を開いた。


「ナオのことなんだけど……実は、俺もずっと前からナオが好きなんだ」


その告白に、ケンジは言葉を失った。カズヤが自分と同じくナオに想いを寄せているとは、全く思っていなかったからだ。二人の間にしばしの沈黙が流れた後、カズヤはさらに続けた。


「でもな、俺はナオがケンジのことを好きなのも知ってるんだよ。それが分かってるから、正直、どうしていいか分からない」


ケンジは驚きつつも、少しほっとした自分がいることに気付いた。ナオが自分のことを好きだという可能性が、カズヤの口から出たことに安堵を覚えたのだ。しかし、同時にカズヤの気持ちを考えると、胸が痛んだ。


「カズヤ……ありがとう。でも、俺も正直、自分がどうしたいのか分からないんだ。ナオのことを知りたいし、もっと近づきたいけど、ナオが何か抱えてるのも分かってる」


カズヤは頷き、微かに笑った。「お互いに複雑だよな。でも、だからこそ俺たちはライバルであり、友達でいられるんだと思う。ナオのことは諦めない。でも、ケンジとも正々堂々とやりたいんだ」


その言葉に、ケンジは力強く頷いた。「俺も同じだ。ナオに対して誠実でありたいし、お前にも負けたくない」


二人はお互いの手を握り締め、友としての絆を確認し合った。ライバルでありながら、友人としての尊敬がそこにあった。


翌日、ケンジは再びナオに話しかけた。彼女が一人で屋上にいるところを見つけ、声をかける。


「ナオ、昨日カズヤと話したんだ。俺もカズヤも、君のことを大事に思ってる。でも、君が何を抱えているのか、それを知ることができないのが正直辛いんだ」


ナオはケンジの言葉に少し驚いた表情を見せたが、すぐに視線を落とした。彼女の顔には悲しみと迷いが浮かんでいた。


「ケンジくん、ごめんね。私、君たちに何も言えなくて……でも、少しだけ時間が欲しいの」


ナオの言葉にケンジは深く頷いた。「分かった。無理に聞こうとはしない。君が話してくれるその時まで、俺は待つよ」


ナオは少し涙ぐんだ目でケンジを見つめた。そして、小さな笑みを浮かべながら言った。「ありがとう、ケンジくん。本当にありがとう」


その瞬間、ケンジはナオが抱える秘密に触れられなくても、彼女にとって自分が何か支えになれたことに少しの喜びを感じた。


しかし、ケンジの胸にはまだ解けない謎が残っていた。ナオの抱える秘密、カズヤとの関係、そして自分に向けられたマナの想い。これらすべてが絡み合い、ケンジの心は一層揺れ動いていた。

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