第七話 五人組

ケンジは、ナオが抱える何かを知りたいと思いつつも、カズヤやアヤカとの交流も楽しみ始めていた。特にカズヤは、一見お調子者のように見えたが、意外と真面目な一面もあり、ケンジと意気投合することが多かった。


放課後、ケンジ、ナオ、マナ、アヤカ、カズヤの5人は一緒に駅前のファミリーレストランに向かうことにした。初めての5人での集まりだったが、和やかな雰囲気が漂い、すぐに打ち解け合った。


「ケンジ、今日もナオにアタックしてたんだろ?」とカズヤが茶化すように言うと、ケンジは少し照れたように苦笑いを浮かべた。


「うるさいな、そんな簡単にいかないって。でも、ナオのこともっと知りたいって思ってるんだ」


ナオは少し顔を赤らめながらも、ケンジの言葉に微笑んだ。しかし、マナの視線はナオではなく、ケンジにしっかりと向けられていた。その目は何かを訴えかけるような、少し切なげな表情をしていた。


「ケンジくんって、ほんとに真っ直ぐだよね。そんなところが好きだな……」マナは小さな声でつぶやいたが、それがケンジの耳に届くことはなかった。


その後、会話はアヤカとカズヤの軽快な掛け合いに引き込まれ、場の空気は一層明るくなった。アヤカは、カズヤが昔どんな悪戯をしていたかを暴露し、カズヤが「おい、それは言うなよ!」と焦りまくる場面でみんなが大笑いした。


そんな中でも、ナオの視線は時折ケンジに向けられ、何か言いたそうな顔をしているのをケンジは見逃さなかった。ナオはやはり、何かを隠しているのだ。それが何なのか、彼はどうしても知りたかった。


レストランを出た後、皆が別れを告げて帰路につこうとしたその時、マナがケンジに声をかけた。


「ケンジくん、ちょっといい?」


マナは少し緊張した様子でケンジを見つめていた。二人だけになったところで、彼女は小さな手を握りしめながら言った。


「私ね……ケンジくんに言いたいことがあるの」


ケンジは驚きと少しの緊張を抱えながらマナを見た。彼の心の中では、ナオへの気持ちが占めているものの、マナが自分に何を伝えようとしているのかに気がついた瞬間、複雑な思いが交錯した。


「何だろう、マナ?」ケンジは優しく問いかけたが、マナの言葉はまだ出てこない。彼女は大きく息を吸い込んで、ついにその気持ちを口にした。


「ケンジくんのこと……私、ずっと前から好きなの……」


その言葉はケンジの心に強く響いた。彼は戸惑いながらも、その場でどう返事をすればいいのか迷ってしまった。マナの瞳は真剣そのもので、嘘偽りのない気持ちが伝わってくる。


「マナ……ごめん。正直言うと、今はナオのことばかり考えてるんだ。でも、君の気持ちを軽く見たりは絶対にしない。ちゃんと向き合いたい」


ケンジの正直な言葉に、マナは少し泣きそうになりながらも、強がりの笑顔を浮かべた。


「そっか……でもね、言えただけで少しスッキリした。ありがとう、ケンジくん」


彼女のその言葉に、ケンジはマナの強さと優しさに感謝しつつ、自分の気持ちを再確認した。彼にとってナオは特別な存在であり、それが揺るぎないものであることを理解した。


帰り道、ケンジは夜空を見上げながら、ナオへの思いとマナへの気持ちの狭間で揺れていた。自分が本当に何を求めているのか、どう進むべきなのか。その答えはまだ見つかりそうにないが、彼は進むべき道を探し続ける決意を固めた。

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