第六話 恋風

翌日、ケンジは再びナオに話しかける機会を得た。昨日のマナとの出来事もあり、彼の心は少し重いままだったが、ナオが何を言いかけたのかがどうしても気になっていた。


放課後、ケンジはナオを校庭のベンチに誘い出した。そこに座り、昨日の続きを尋ねる決心をした。


「ナオ、昨日、何か言いかけてたよね。あの時の続きを聞いてもいいかな?」


ナオは一瞬だけ視線を外し、深呼吸をしてからケンジに向き直った。その表情は少し硬く、真剣なものに変わっていた。


「ケンジくん……実は、私……」


ナオが言いかけたその時、遠くから楽しそうな声が聞こえてきた。振り向くと、そこにはアヤカと新たな登場人物がいた。アヤカの隣に立っていたのは、明るい茶髪にピアスをしている少し不良っぽい男子生徒だった。彼はケンジたちを見てにやりと笑う。


「おーい、ケンジ!こんなところでナンパしてるのか?さすがモテ男だな!」


ケンジは一瞬戸惑ったが、アヤカがその男子生徒を紹介してくれた。


「ケンジくん、この子はカズヤ。私の幼なじみで、最近転校してきたの。ちょっとお調子者だけど、よろしくね!」


カズヤはケンジに軽く手を振り、親しげな笑顔を見せた。その態度に、ケンジは少し警戒心を抱いたが、すぐに笑顔を作り返した。


「よろしく、カズヤ。突然の登場にちょっとびっくりしたけど、アヤカの友達なら歓迎だよ」


「おう!お前のこともアヤカから聞いてたぜ。なんだか面白そうな奴だってな」


カズヤはそう言って、ケンジの肩を軽く叩いた。その軽口に乗せられて、ケンジも少し笑ってしまった。しかし、ナオの表情はどこか複雑そうだった。彼女は一度アヤカに目を向け、それから静かに口を開いた。


「ケンジくん、カズヤくんがいるなら、この話はまた今度にしようか」


その言葉に、ケンジは少し落胆したが、無理に追求するのはやめることにした。ナオが抱えている何かがあることは確かだが、彼女が話す準備ができるまで待つことにしようと決めたのだ。


カズヤとアヤカが去った後、ケンジは少しの間一人で考え事をしていた。ナオが何を隠しているのか、それが彼の気持ちにどう影響するのか。そして、アヤカとカズヤという新たな友達がこの物語にどんな風を吹き込むのか。


そんなことを考えていると、再びカナミ姉さんが現れた。彼女はケンジの顔を見るなり、何かを察したように微笑んだ。


「また何か悩んでる顔してるわね、ケンジ。今日はナオちゃんのこと?」


ケンジは驚いた顔をして、カナミを見た。


「どうして分かるんだ、姉さん?そんなに俺、顔に出てるのか?」


「ふふ、バカね。お姉ちゃんには全部お見通しよ。でも、あんまり焦らない方がいいわ。恋愛はタイミングが大事だから」


カナミの言葉に少し気が楽になったケンジは、彼女に感謝の気持ちを伝えた。そして、再び気持ちを切り替えてナオやマナ、アヤカのことをもっと知りたいと強く思うようになった。


その日、ケンジはナオに対して再びアプローチする決意を固め、マナの気持ちにも真摯に向き合うことを心に誓った。そして、新たに現れたアヤカとカズヤの存在が彼の恋の行方にどのような影響を与えるのか、その答えを見つけるために進んでいく決意をした。

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