第三話 混乱
新学期が始まって数週間が経ち、ケンジも少しずつ高校生活に慣れ始めていた。クラスの仲間たちとも打ち解け、学校に通うことが楽しくなってきていたが、彼の心の中ではナオの存在が日に日に大きくなっていった。
ある日、昼休みに教室でお弁当を広げていると、ミカが隣に座り、ケンジをじっと見つめてきた。
「ねえ、ケンジって最近ナオちゃんとよく話してるよね。やっぱり気になってるの?」
突然の問いかけにケンジはドキリとした。ごまかすように笑いながら、ゆっくりと答える。
「そ、そんなことないよ。ただ、クラスメイトとして仲良くしてるだけだって!」
ミカは疑わしそうに目を細めながらも、何かを思いついたようにニヤリと笑った。
「そっかー。じゃあ、ケンジのことを好きな人がいても平気ってことだね?」
「え?それってどういうこと?」
ケンジが慌てて聞き返すと、ミカはふわりと微笑んで、教室の後方を指差した。そこには、サブキャラクターのマナが座っており、こちらをチラチラと見つめていた。彼女の頬はわずかに赤く染まっている。
「マナちゃん、ケンジのことが気になってるみたいなんだよね。どう思う?」
マナは控えめでおっとりとした性格の持ち主で、クラスでも目立たない存在だったが、その笑顔は純粋で魅力的だった。彼女が自分に恋心を抱いていることを知り、ケンジは一瞬戸惑った。
「マナちゃんが俺を……そんな、全然気づかなかったよ」
ケンジは困惑した表情を浮かべながらも、どう答えればいいのか分からずにいた。その気持ちを察したミカは、少しだけ真剣な表情に変わった。
「ケンジ、今はまだナオちゃんに気持ちがあるかどうかもはっきりしてないみたいだけど、自分の気持ちに正直になってみたら?無理に答えを出さなくても、少しずつでいいからさ」
その言葉に、ケンジはハッとさせられた。確かに、今はナオに対する感情も混乱しているし、マナの想いにもどう向き合うべきか分からない。しかし、少しずつでも自分の気持ちを探っていくことが大切だと感じた。
その日の放課後、ケンジはナオと帰る約束をしていたが、突然彼女に先約ができたと言われた。少し残念に思いながらも、ひとりで帰ることにした。その途中で偶然、マナとばったり会った。
「ケンジくん……今日、帰り道一緒に歩いてもいい?」
マナは少し恥ずかしそうに言いながらも、どこか期待するような目でケンジを見つめていた。その視線にケンジは少し驚きつつも、ゆっくりと頷いた。
「うん、もちろん。一緒に帰ろう」
二人は並んで歩き出し、穏やかな夕陽が街を照らしていた。会話は途切れ途切れだったが、マナは何かを話したそうにしているようだった。そして、とうとう意を決したように口を開いた。
「ケンジくん、実はね……私、ずっと前からケンジくんのことが好きだったの」
その告白にケンジは息を呑んだ。マナの頬は赤く染まり、目には涙がうっすらと浮かんでいる。その姿に、ケンジはどう言葉を返せばいいのか分からなくなってしまった。
「マナちゃん……ありがとう。でも、今はまだ、自分の気持ちがよくわからないんだ。ナオのこともあって、混乱してて……」
ケンジの言葉を聞いたマナは少しうつむいたが、次の瞬間、無理に笑顔を作りながら優しく言った。
「大丈夫。私はケンジくんの気持ちが決まるまで、待ってるから。だから、焦らなくていいよ」
マナの言葉に、ケンジは胸が締め付けられるような痛みを感じた。自分を待ってくれるというその優しさが、彼をますます混乱させたのだ。そして、彼女の想いにどう応えるべきか、まだ分からないまま、二人は静かに歩き続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます