第17話 主人公だからって何でも出来るとは限らない
お忘れかもしれないが、オレの魔法は一つしかない。
マジックカードを取得時に誰しも最低一つはランダム習得をするそうだが、オレの魔法はぶっちゃけ学園長の仕業だと疑っている。
本人はその辺り笑って誤魔化していたが、噌のせいで本来得る筈だった魔法を取得し損ねた可能性がある上、その魔法はとんでもなく魔力消費が高いものだった。
オレの魔力では全然足りない。発動すら不可能な代物。
しかし、オレの中に棲み着いているネコミミによって発動不可能な魔法を発動できるようにしている。
だが、そこには更なる問題がある。
オレの魔法【マテリアル・オーダー】はただ発動するだけでは意味をなさない。
魔力を物質化させる為の情報が必要。その情報を読み込む為にも莫大な魔力を使わなねばならないが、制限が多いミヤの魔力ではそこまでカバーで出来ない。
だからオレはSランクに上がるためのポイント。
他の魔法を取得する為に必要なポイントを泣く泣く使わないといけなかった。勝ち上がる為には。
*
入学式の日にオレは何してんだマジで?
「なぁやっぱりやめないか? さっきのハイはちょっとした勘違いで」
「遠慮せず魔法を使って良いのよ。まだまだ初心者なんだし待ってあげる」
「拒否権なしかよちくしょう!」
いつの間にか結界の中に入れられていた。多分先生の仕業だが、貴女までオレが承諾したように見えたんですか? どうせ幼馴染二人みたいに勝手に理解して張ったのだろうな。
「畜生めぇ! こうなったらぁー!」
『よーし、詠唱を唱えていいぞー。魔力の充電も完了だ』
「やってやるわ! 【我は万象にして原初を司る、それは幻想の黙示録、無限の叡智そして我は求める者】―――」
ミヤからの合図を聞いて、オレはすっかり覚えた相変わらず意味が分からない詠唱を唱える。
「【マテリアル・オーダー】装備コール。【ダークナイト】
『【ダークナイト】―――
変えた姿はお馴染みの『ダークナイト』で登録されている黒の暗殺者スタイル。
どうでもいいが、夏場の時とかどう考えても暑苦しくから使いたくないな。(*本当にどうでもいい話です)
「これでいいか?」
「ええ、それを待っての」
オレが引き抜いた黒のダガーを構えていると、雪奈も腰に付けた細長い入れ物から警棒を取り出し軽く振って、剣くらいのサイズまで伸ばした。
「マジックアイテムの警棒。当たると凄く痛いみたいよ?」
「何故疑問形?」
「私は使ってないから」
「人にばっか向けんな!」
しかも合図なんてなくていきなり振って来やがった!
「って危ねぇ!?」
「もう戦いは始まっているのよ。それともまだ駄々をこねる?」
「ぐぎぎぎぎぎっ! い、いいぜ。こうなったらヤケだ!」
『うわーちょろいわこいつー』
うっさいわ! いいからフォローしろよこのポンコツ猫耳が!
咄嗟に躱して背後に回り込もうとする。試験の時のように足技で嵌めてやろうか思ったが。
「なっ!?」
「遅いわね。そんなに大回りじゃ対応するのも楽ね」
円を描くような足捌きで背中を見せない! なんだその動きは!?
『円舞、演舞? ダンスみたいなやつじゃなーい?』
アバウト! 頭の中で文句を言いつつ試しに蹴りを入れると腕で簡単に流される。
「その程度なの? 実は口だけ?」
「ま、まだまだ!」
試しにダガーでも切り掛かるが、警棒の腕にも特殊な技が織り込まれているのか、簡単に弾かれて全然攻撃が通らな―――!?
「転がされたぁぁぁあああ!?」
「何をそんなに驚いているの? 私も攻撃するに決まっているでしょ?」
転がすとかありかよ!? 攻撃的なカレン姉や和馬とも全然違う!
「やり難いな!」
「ほらほら、男のなんだからもっと頑張りなーーさい!」
「イッーータァ!?」
この女ァァァァ! さらっと警棒で脛狙いやがった!
「【バースト・エンド】!」
青い炎をダガーに纏わせて大きめの剣へ形状を変化させる。
「『ブルー・ソード』!」
「――いいわ。【氷雪の一振り】―――【アイス・サーベル】」
警棒を纏うように氷で出来た細い剣が生成される。
「来なさい。可愛がってあげる」
「絶対泣かす!」
『こりゃあフラグが立ったなー』
だからって素直に負けてたまるかよ!
しっかりフォローしろよミヤ! 普通に戦ったら絶対勝てませんから!
『ワオー、全力でミヤの手を借りるだわー』
使えるもんは何でも使わないとな!
付けているグラサンに予測線がいくつも出現した。
『ユッキーの情報は少ないからタイミングは自分でも考えてねー? 合図したら行くよー?』
雪奈はユッキーなのね。内心軽いなーって思いつつタイミングを待っていると……
『いま』
「行くぜ!」
「っ!」
雪奈のサーベルに炎の剣を叩き込む。
正直剣術の腕なんてたかが知れているので、アイツの武器ごとぶっ飛ばしてやる!
「そんな力任せが通ると思って――っ!」
「はぁあああああああ!」
余程自分の氷剣に自信があったらしいが、オレの炎も嘘か本当か『竜王の炎』なんて全然普通じゃないヤツである(ぶっちゃけ竜王とかオレも全然信じてないが)。
「溶けた!? Bランクでも火の系統とは相性のいい氷結魔法なのよ!?」
「氷だけじゃない! 叩き込め『ブルー・ソード』ォォォオオオオッ!!」
「――ッま、まさか!?」
勢いに乗せて叩き付ける力を込めていくと、バキッとガードに使う雪奈の警棒が折れた!
「よっしゃー!! ドンドン行くぞォォォオオオ!」
『あ、ばか』
動揺している今がチャンス! 畳み掛けようと炎の剣で思いっきり振るってやると。
「ぎゃうッ!?」
「何かの間違いかと思ったけど、本当にこの程度なのね。欠伸が出そうだわ」
待っていたように前蹴りを腹にモロに受けてぶっ飛ばされました。
同時に炎の剣も解除してしまった。
「初めて会った時はもっと出来てたのに……これじゃこっちの予定も狂うじゃない」
「ゲホゲホッ……知るかよ。あーくそ」
『調子に乗ってつっこむからー。相手はトウヤよりずっと戦闘経験を積んでるんだよー? アレくらいの危機ならすぐ対応できると思うなー』
そうですか。でも不思議だな。前戦っているところ見た時はそこまで凄い風には見えなかったのに。
『多分ダガー(竜骨)の呪いの影響かな。ユッキーも疑問に思ってるみたいだけど、まさかあの時の戦いが呪いの暴走が原因なんて夢にも思ってないだろうねー』
そういえばそうだった。今は呪いの方もミヤが調整して落としてくれてるから自覚はなかったが、あの時の無双状態は呪いも関係していたのか。
『どうするー? 一か八か漏れてる呪いの濃度を戻すー?』
それは絶対やめてくれ。……さっき情報不足とか言ったが、今もダメなのか?
『さっきよりは集まってるけど、まだまだ足りないかなー。けどもっと追い詰めれば相手も自然と使い慣れた戦い方を選ぶだろうからねー。今以上にユッキーを動揺させて追い込んでいけば……』
なるほどなるほど、……なら試しに使うかアレを。
『お、おー! 使うってもしかしてぇー?』
「使うぜ―――【
宣言すると懐から三色のキーホルダーを取り出した。
おまけ キャストトーク
冬夜「お、おかしい! 前より全然カッコよくない! ていうか遊ばれてボコボコじゃん!」
ミヤ「ある意味これが現実だよねー。半年鍛えたって言ってもトウヤの戦闘センスは付け焼き刃だもん」
冬夜「試験の時は結構行けてたよな? カレン姉には全然勝てないが、それでも良い感じに」
ミヤ「それは相性ってヤツだよー? 試験管の人の場合は動揺もあったけど、それ以上に学生相手だからついつい加減してたのが原因だねー」
冬夜「つ、つまり?」
ミヤ「トウヤはまだまだ修業が足りないのだー(ビシっ)」
冬夜「がっくり!」
これでも一応主人公補正とかあるけど。技術面が圧倒的に不足していた。
◯作者コメント
寒いせいで朝起きるのがしんどい!
ちょっと内容の軌道修正を検討中です。というか暴走気味で色々やらかしたので、とりあえずキリのいいところまで書き上げて、やり直すかちょっと考えてみます(汗)。
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