第9話 結局仕組んだのは学園長で受験先も決まっちゃった
「じゃあ、全部学園長の仕業だったと?」
「仕業と言われると否定したくなるが、ここは頷いておこう。私が壱村冬夜くんにカードを渡したのにはちゃんと理由がある」
桔梗姉さんの問いかけに苦笑顔で頷くシルバー学園長。ていうか冗談だと思ったが、マジですか。
「この学園長、メガネ叩き割ってやろうか(ボキボキと拳を鳴らす)」
「あらあら、機関に告げ口しようかしら(笑顔だけど目が笑ってない)」
「ま、まぁまぁ二人ともとりあえず話を聞こう?(ヒヤヒヤ)」
その反応にカレン姉も母さんも険しい顔をするが、まずは話を聞こうと父さんが宥めている。頑張ってね?
「そもそも私が冬夜君に目を付けたのは昨日じゃない。もっと前、君の両親の葬儀の時だ。私はね、あの時君と会ってるんだ」
「っ!」
この人は、まさかオレのことを知ってる?
知っているのは今の家族と幼馴染たちくらいだと思っていたが。
「覚えてなくても無理はない。君はまだ幼かったし、声をかけたが呆然としたままだったからね。仕方ないけど」
正直記憶もあやふや、涙目の姉さんたちに抱き締められたことしか覚えてなかった。
「目にした最初は気のせいかと思ったが、壱村さんたち引き取られて以降もそれとなく君を陰ながら見て確信したよ。君の中には我々の宿敵が眠っていることを。ああ、私の感知能力は」
宿敵ってまさか……
「ミヤのことを言いたいのかー? 魔導師」
「お前!」
「「「「「な!?」」」」」
「やはり出て来たか。ずっと見ていたんだろ?」
「まーねー」
いきなりオレの背後、抱き付くように着物姿のミヤが突然現れたことで、学園長以外みんな驚いた顔でミヤを凝視する。そりゃあネコミミと尻尾付けたロリが出て来たら当然の反応だけどね。
「冬夜くんにネコミミの彼女が出来たの!?」
「違うよ母さん」
「冬夜、そんなにおっぱいが大きいのがいいのか!? 年齢はともかく少女体型はマズいだろ!」?
「くたばれ親父」
やっぱり姉さんたちの親だわ。反応がほぼ同じ。
「久しぶりって言った方がいいかな? ミヤ」
「久しぶりー、お・じ・さ・まー」
「おじ様はやめてくれよー」
ぽけーとした顔のミヤとニコニコしたシルバー学園長が対面する。
さらとおじ様って言っているが、もしかして知り合い? どころか親戚なのか?
「彼女とはちょっとした訳ありでね。本音を言うとこのまま目覚めないで欲しかったかな」
「わーおーぶっちゃけたねー」
「君が過去にし出かしたことを考えれば妥当な対応だと思うよ? 寧ろ今すぐどうにかしようとしないことに感謝して欲しいくらいだ」
このネコ娘、いったい何やらかしたんだろうか。学園長の笑顔に凄みが出ている気がするが、全然気にした風もなくにゃにゃしていた。
「冬夜君が魔力に目覚めなければ、こんな強引な方法を取る必要もなかったんだけどね。ただの一般人のままなら例え彼女という爆弾を背負ってても監視付きになるが、無害認定を勝ち取るのは難しくなかった」
「確認の為に聞きたいんですけど、ミヤはいったい何を?」
「ずっと昔の話だけどね。ちょっと世界を巻き込むくらいの大騒動を引き起こしてね。知っている魔法使いなら間違いなく彼女の退治を進言するだろう」
「分かりました。これ以上聞きません」
それ絶対ちょっとじゃないですよね? ていうかなんでそんなネコミミがオレの中で眠ってたの?
「禁忌に該当するから詳しくは言えないが、いわゆる『転生魔法』の一種だと思ってくれればいい。私としてもこのような方法で生き延びしているとは思わなかった」
「いえーい」
いえーいじゃねよ。お陰でこっちは酷い迷惑なんですけど。
「しかし、急激に覚醒が早まった要因は私が渡したカードではないよ。カードは保険で暴走抑制の為の処置だが、確かあれは一年くらい前だったかな? それまで彼女の反応が冬眠と言っていいくらい落ち着いていたんだが、急激に高まったんだよ」
「い、一年前ですか」
ふいに起きた際にミヤに言われたことを思い出す。
目覚めた原因、絶対何かの間違いだと信じなかったが、この人がそう言うってことは、ほ、本当に?
「冬夜くんが愛華ちゃんに振られたから」
「冬夜がドウテイを卒業出来なかったから」
「冬夜くんの初恋が終わったから」
「冬夜の恋愛が終了したから」
「この家族ども!! そんなにオレの古傷を抉るのが楽しいか!?」
「うん、フラれたショック。トウヤのガラスのハートがくだけちった」
「今まさにオレのガラスのハートが傷つているよ!?」
また話が脱線してる!? 人のトラウマを抉ってもうどうしろって言うの!?
「流石に龍宮寺君に与えていた任務と被ったのはこちらの意図ではないが、お陰でカードが問題なく機能していることが分かった。本当はもっと別の機会を考えてたけどね」
「見張っていたのに加勢せず、龍宮寺さんにも何も伝えなかったこと、後で問題になっても知りませんからね?」
「あはははは……やっぱりマズイかな?」
佐奈さんが学園長の後ろで鋭い指摘をする。冷や汗かいているから全然大丈夫じゃないんですね。
「コホン、とにかく魔力が覚醒してカードを持っている以上、もう君を放置して置く訳にはいかない。何よりミヤ、君を野放しにした事が魔法機関にバレたら私たちの首が飛んじゃう」
「いえ、飛ぶのは学園長だけです」
「う、うーん、というわけで私の為と思ってちょっとこちらのお願いを聞いてくれないかな?」
こ、これが本題ってことかな?
で、学園長のお願いと言う名の半ば強制的なお話の結果どうなったかというと。
*
「では、これより特別試験を行います。壱村冬夜、準備はよろしいですね?」
「はい……」
あれから約半年、年越した2月。オレは受けようとしていた高校をやめて、この学園に進学するための特別試験を受けるハメになってしまった。
おまけ キャストトーク
冬夜「今回もちょっとした補足説明になるが、魔法学園の受験時期は8月9月10月となっている。普通は1月の終わりからであるが、特殊な機関の為に受験時期も早い。その代わり3月くらいまでの間、魔法の基礎を覚えるのための研修期間が存在しており、入学が決まっている学生は皆受けなくてはならないそうだ」
桔梗「私たちみたいに前からカードを持つ人の場合は軽い研修だけで済むよ。研修対象は大体高校から魔法を学ぶことになる素人の人だけ」
花蓮「ちなみに冬夜が魔法に目覚めたのは7月で受験時期的にはまだまだ間に合うが、本来の手続きがもっと前から行われていたことと既にカードを持っているのに魔法知識が全然ないから、急いで魔法の勉強や実技を行う子ことになった。学園長権限で特別試験扱いとなって2月に受けることになった」
冬夜「だから超目立ってるんだが、気にしたら負けだよね!」
花蓮「まぁアタシらの弟って時点で普通に目立つよな。諦めは早い方がいいぜ?」
桔梗「頑張ってね冬夜くん!」
冬夜「ふふふ、頭がいたいぜ」(*頭痛薬を献上しよう)
目立つ姉たちがいると弟は肩身が狭いのであった。
◯作者コメント
まだ学園生活が始まらない。学園ものでもあるのだが。
ちょっと最近第一話を半分に分けました。やっぱり1話分にしては多いと思ったので、今後も盛り込み過ぎないようにしたいですかね。
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