第8話 会話はよく脱線するから大事な話が進まないのだ

『まずは自己紹介から行こうか、私の名はシルバー。この映像は君の家族が……恐らくお姉さんたちかな? がカードに触れると出てくるように私が細工した。ドッキリ大成功だね! 桔梗くんや花蓮くんもビックリしたかな?』


 どうにかカレン姉の機嫌を直して、踏んづけていたカードを取り戻したら銀髪のイケメン、姉さんたちは学園長と呼ぶ男性は何処から出したか『ドッキリ大成功!!』のプラカードを持ってニコニコして。掛けているメガネがキランと光った気がした。


「(イラッ)寄越しな冬夜。今度こそカードごと叩き折ってやるから」

「落ち着いて、学園長のおふざけ何て今に始まったことじゃないでしょ? 寧ろ普段の学園での強制イベントよりはマシとだと思うよ」

「イベントって、どんな学園生活送ってんだ二人とも」


 二人の様子からして相当好き放題している人物らしい。普段から自由気ままなカレン姉が嫌悪感を隠しもしないとはオレの想像以上かもしれない。


「ふーん」


 ミヤはミヤで何か意味深な目で男を見るが、すぐどうでも良くなったのか、寝転がってこちらに背を向けたって尻尾付のプリンとしたお尻が丸見えにぃいいいい!?


「冬夜くんが男の子なのは前から分かってるけど今は画面を見ようね?」

「受験勉強ばかり溜まってるのも知ってるから今は我慢しろ。まぁアレだ。ムラムラが止まらないなら今夜発散させてやるからさ」


 ちょっと何言ってるか分かりません。


「ダメだよ花蓮。冬夜くんを気持ちよくさせるのは私の役目だもん!」


 そんな役目は担う姉はこの世に存在しません。


「なら二人同時にやるか」

「ん〜代わりばんこでもいいけど、冬夜くんの冬夜くんが保つかな?」

「大丈夫だろ。すっごい溜まってる筈だし、十六連射くらい余裕だろ?」

「そろそろ話を戻そうか。いい加減にしないと話が脱線し過ぎて話の着地点が見えなくなる」


 何がよ、だよ。そんなにしたら枯れるだけじゃ済まないわ。廃人になるわ。

 不思議な話であるが、こんな無駄話の最中でも学園長の人が喋るということはなかった。

 別にリアルタイムというわけでもないのにずっと待っててくれた。


『さぁて、壱村冬夜くん。君の頭の中はきっと色々な疑問で一杯だろう。家族の正体や魔法の存在にそして私が何をしたのか、どうしてこうなってしまったのかと。だから直接会って話したい。今からお姉さんたち一緒に学園に来てくれない。なぁに大丈夫、君の親御さんたちにも話は通してあるからすぐに会える』


 男はニコニコした顔で言う。どうしたものかと思ったが、結局色々仕組んだと思われる学園長を締め上げるつもりのカレン姉に連れられるように二人が通っているMGM学園、通称魔法学園へ足を運ぶのだった。


「「冬夜! 無事か(なの)!?」」

「父さん、母さん!? 何でここに!?」


 電車移動を含めて約30分ほど、バカでかい学園の校舎に入って、待っていた案内の役教員に姉さんたちと一緒に案内された部屋に何と出張中の筈の両親がいた。

 他県にいる筈の二人が此処に。心配して駆け寄る二人をよそに驚きを隠せないでいると。


「私が呼んでおいた。何故遠方にいる二人がいち早く来れたのかは……かなりズルいが、ちょっとした魔法を使ったからさ」

「『転移魔法』は使用規制が非常厳しいんですから、次からはちゃんと事前に申請をお願いしますね学園長」

「ごめんごめん。今回は緊急だったんだ。多めに見てよ佐奈さなちゃん」


 奥の席で同じくオレたちを待っていた銀髪のシルバー学園長。それと側には女性用のスーツ姿で金髪の綺麗な眼鏡のお姉さんが立っていた。

 小言でニヤニヤしている学園長を注意しているようだが。


「反省しているならもっとそれらしく振る舞ってください。あと他の人の前でちゃん付けはやめなさいといつも言ってますよね?」

「い、たいたい、ほおを引っぱらないで〜」


 イラっとしたのかニヤけた頬を容赦なく引っ張る佐奈さんとやら。容姿も良く見た目も綺麗だけど無表情な人で結構怖かった。


「イタタタ、そ、それじゃあ話をしようか。怒っていると思うが、どうか最後まで聞いてほしい」

「そうだな。しっかり説明してもらわないとな。アタシらの冬夜を巻き込んだからな?」

「納得出来る内容ないなら私たちにも考えがありますからね?」

「こらこら花蓮に桔梗も、相手は目上の人なんだからもう少し言い方をだな」

「黙って父さん。こっちは頭にきてる」

「大事な事なんです。お父さんは口を挟まないでください」

「か、母さんや?」

「あなた、少し黙っててくれます? 私も学園長からのお話をぜひ聞きたいので」

「……はい」

「弱いよ親父……」


 娘二人の冷たい言葉にガックリしている親父。カレン姉だけならまだしも桔梗姉さんや母さんまであっち側に加わっているから無理な話か。

 全員が席に着くと学園長が話を切り出した。


おまけ キャストトーク

冬夜「短い!」


桔梗「続けるとまた無駄に長引くからここまでにしたそうだよ?」


花蓮「不思議だな。もう少し余裕があった筈だが、なぁ桔梗?」


桔梗「そうだよね? 不思議だよね?」


冬夜「きっとアンタらが暴走した所為だろうな」


ミヤ「やれやれー、発情したメスはこれだからこまるぜー」


冬夜「途中まで全裸だった奴に言われてたくないわな。ていうか学園に着いた時に既にいなかったけど、どこ消えたの?」


ミヤ「んー? 冬夜の中だよー? 大丈夫大丈夫、必要ならミヤも出て会話にまざるからねー」


冬夜「うん、何も安心できないよねー」


 そう、会話の脱線はよくあることなのだ。


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