第7話 回想終了したら元の日常生活に戻るんだ(←これがフラグです)
龍宮寺雪奈は夢でも見ている気分であった。
「あ、兄貴助けっ!?」
「消し去れ【バースト・エンド】」
「あ、ギャアアアアアアアア!?」
「弟ぉおおおおおおお!? オノレ貴様ァアアアア!!」
「『ブルー・キック』」
「ゲボバアアアアアアアア!?」
無双とはきっとこういうことを言うのだろう。
ただの捕縛ミッションだった筈が、まさかこのようなことになってしまうとは。
厄介であった筈の土系統のリーダーと雷系統の弟を連携などお構いなし。フィールドのおかげで相手は死んではいないが、これではなぶり殺しに等しい。耐性がなければ嘔吐して不思議じゃない光景である。
「『ブルー・バレット』」
青い炎が付与された銃で撃つ。
何かに直撃すると青い爆炎を引き起こして、辺りをまるで蹂躙された戦場のように塗り替える。
黒っぽい格好に銃とナイフとサングラス。少しでも彼の人柄が分からなければヤバい人にしか見えなかった。
「……こんなものか」
気付いた時には敵は全員戦闘不能。
勝利が確定したことで結界も消滅し始めている。こんな時にアレであるが、これってポイントの報酬はどうなるのだろうか? ポイントが欲しい雪奈は少なからず嫌な予感がしたが。
「ね、ねぇ貴方、その魔法はいったい」
何?と訊ねようとしたが、サングラスを外してこちらを見た銀の瞳を見ていると……。
「(アレは? ――何?)」
その傍にはさっきまでいなかった炎のような赤い髪の女性が立っていた。
女性も雪奈の視線に気付いてニヤリと顔を向けると……ゆらりと炎のように揺れて消えた。
「帰る」
「え?」
彼女に向かってそう伝えるや結界が解けたと同時に勢いよく駆け出した。
「ま、待って、待ちなさい!」
慌てて彼女も駆け出すが、既にフィールドは消失して元の街並みに戻っている。
結果、強化していた身体能力が元に戻ってしまう。
少しは強化の名残りはあるが、フィールドの外では魔力は扱いが非常に難しいので、大半の魔法使いはフィールドの外では魔法が使えなかった。
そう、大半は。
「彼、結界の外でも魔法を使えるの? だとしたら教員レベルじゃ」
武装した格好ごと魔法であった彼は彼女よりも先に結界の外に出ていたが、魔法が消滅しているようには見えなかった。
先ほど話した際は魔力が全然感じなかったのに、アレほど敵を圧倒的出来る程の魔法とはいったい……。
「……先輩たちに報告しないといけないわね」
先輩ではあるが、別に親しい訳ではない。寧ろSランクを目指す自分にとって障害でしかないが、巻き込んでしまったのは自分なのでこのまま放置する訳にはいかなったし、力を欲している彼女にとって彼のような存在はとても無視出来るものではなかった。
「連絡先知らないから休み明けになりそうね」
すぐに姉たちの耳に入らなかったことが、彼にとっての幸運か不運かは……次の日の朝になれば分かる。
*
「それで? 期待出来るものは見れたわけ? かなり暴走したようにも見えたけど」
「ああ、アレなら上々だ。まだまだ早いかと思ったが、どうやら向こうも出る機会を窺っていたらしい。タイミング的に悪くなかったようだ」
「わざわざ規律を破ってまでする価値はあったの? 規格外のカードの改造、ポイントの無断チャージ、未登録扱いの魔法の勝手な書き込み、そして『審査対象外』兼『観察対象者』である彼に勝手なカード提供。いくら学園長という立場の貴方でも相手が彼だと分かったら知っている人たちからの反発は大きいわよ? 特に彼の保護者たちは絶対黙ってないわ」
「仮に俺が未介入を貫いても遅かれ早かれ彼女は出て来たさ。一年前の時点で既に賽は投げられている。なら首輪としてあのカードを与えるのも悪い選択ではないだろう?」
「でもあの魔法はオリジナル―――『原初魔法』を与えるなんて正気なの?」
「アイツが使っていた魔法なら寧ろちょうど良いさ。それでまた昔のように暴れるのなら仕方ない。亡くなった彼の両親に申し訳ないが、その器ごと今度こそ消えてもらおう」
*
はい、そんな感じで朝を迎えた壱村冬夜です。あーどうもどうも。
オレの回想の筈なのに何故かところどころ別の人の回想になっている気がしたが、細かいところは気にしないということで!
「まぁざっくり説明すると昨日カードを拾ったら魔法を知って、マジックバトルっていうのに巻き込まれたらそこのネコミミ娘(大人バージョン)が出て来て唆されて試しに魔法を使ったら、なんか殺し屋か暗殺者みたいな格好に変身してスッゲーと思ったら体を乗っ取られて、野良魔法使いって連中をボコボコにしたり斬ったり撃ったり燃やしたり、暴れるだけ暴れたところで意識が飛んで気付いたら自分の部屋で寝てて隣の全裸のネコミミ娘がいました。あ、思い出した。このネコミミの名はミヤって言うんだ。出会った時は大人の女って感じでこんなロリ全開なにゃにゃキャラじゃないから、オレをロリコン扱いするのはやめてくれ」
「「……あ、うん、わかった(もう色々疲れたような諦めたような顔)」」
「ミヤの扱いがざっくりされたみゃ!?」
以上ざっくり解説でした。(*貴方はざっくりと言う単語を調べ直しなさい)
「まさか龍宮寺が絡んでいるとはな。こりゃ明日は呼び出さないとな」
「私も参加するんだから穏便してよね。生徒会副会長なんだからあんまり会長さんを困らせたらダメだよ?」
「そりゃアイツの対応次第だよ桔梗(ポキポキ)」
「はぁ」
いつも笑顔で済ませる桔梗姉さんがため息吐くって結構レア!
龍宮寺の話と照らし合わせると魔法学園で相当暴れたと見えるが、それだけ好き放題したのになんで生徒会どころか副会長にまでなれるんだ!? 入れる基準ってなんだ!? 戦闘力ですか!?
「花蓮はね。男子はともかく女子からは結構人気があるの。明かすとね最初は普通の選挙だったんだけど、途中から副会長の座を賭けたトーナメント戦になって、決勝で花蓮が当時の二年の副会長を殴り飛ばして副会長の座に」
「結局殴り合いじゃねぇか!」
「いやー(てれり)」
「褒めてねぇーよ!」
この姉は! 進学して生徒会にも入って、少しは丸くなったと思ったら! 中学とやってることが全然変わってない!
「魔法の存在を知ったから余計に酷いわ!」
「『マジックバトル』のフィールド以外じゃそこまでの魔法は使えないぜ?」
「ホント?」
「身体強化くらいなら私たちでも出来るよ? フィールド外だと寧ろ危ないかも」
タチ悪いわ。
「やっぱりすぐお父さんたちに連絡した方がいいね。あと学園にも報告しないと」
「その場合冬夜の扱いはどうなるか。……冬夜、一度アタシたちに持っているカードを見せてくれないか?」
「あ、ああ分かった」
言われて机に置いてあったカードを見せる。よく考えたらオレもあれっきり見ていないので覗き込むと。
壱村冬夜 Gランク(ランクアップ可能)
魔力量G 魔力質E 放出力F 操作力F
MP(マジックポイント) 1500ポイント
魔法【マテリアル・オーダー】
効果『魔力の物質化』『記録を読み取り再現する』
詠唱【我は万象にして原初を司る、それは幻想の黙示録、無限の叡智そして我は求める者】
保存中『ダークナイト・一式』
なんか、数字増えてねぇ? あと前になかった魔力に関係ありそうな項目と保存中が増えて隣にダークナイトとかあるが、もしかしなくてもあの時の真っ黒な装備か。
「1500ポイント!? なんでこんなにあるの!? 昨日相手にしたのただの野良魔法使いなんだよね!?」
「ランクアップ可能なのは理解出来るが、それでもこれは……」
オレが思うよりもえらいことになっているのか、桔梗姉さんもカレン姉も目を見開いてオレから奪うようにカードを手に取ると。
「――! カードが!」
「え、光った!?」
姉さんたちがカードに触れた途端、カードが輝き出す。
「アタシたちの魔力に反応した?」
カレン姉は冷静に……同時に胡散臭そうに見ている。何か思い当たる節でもあるような顔で……。
『ふむ、どうやら無事に集まったよ――』
「やっぱりお前かクソ学園長!!(カードを床に叩き付けて踏ん付けた!)」
「躊躇なく蹴りに行ったぁああああ!?」
踏まれる寸前だったが、カードから浮かび上がった映像の人物に思いっきし見覚えがあった。オレが落としたというカード渡して来た銀髪のイケメンであったが……学園長なんですね。映像越しでカレン姉に容赦なく踏まれていたけど。
おまけ キャストトーク
冬夜「えー、今回はちょっとした補足説明になります。オレのカードに今回からステータスが追加されたのは魔法を使用した為で、決して前回の時に付け足すのを忘れたわけではありません。大事なのでもう一度言いますが、忘れたわけではありません(メモ帳)」
桔梗「ステータスと言っても魔力、魔法に関係する項目だけで、よくある強さや速さなど身体的な項目はないのでご注意ください」
花蓮「ランクと同じでステータスの一番下はGランクで別名『ショッボイ』だ! 素質のあるなら少なくとも魔力量はEランクかFランクからスタートする奴が多いが、アタシの弟はやっぱり小さいなー」
冬夜「そんなこと言われてもしょうがないだろ!?」
桔梗「私たちが取得したのは小学生の頃で、初めてのステータスは最低でもDランクでした」
花蓮「……やっぱりショボいな冬夜は」
冬夜「ぐすん(オレが悪いわけじゃないのにー!(涙目))」
ちなみに桔梗、花蓮の当時の一番下だったのは『放出力(桔梗)』と『操作力(花蓮)』。
そして現在は―――『Sランク』。
◯作者コメント
ようやく回想終了で次回から学園編と言いたいですが、主人公の置かれている状況や試験とか色々残っているので、本格的なスタートは次の次あたりになるかと。
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