第10話 地獄の半年も回想なら1話で済む
読者からしたら何いきなり半年近く経ってるんだよって言いたくなるが、言わせてくれ。この半年間はマジで地獄だった。
壱村冬夜 Gランク(ランクアップ可能)
魔力量G 魔力質C+ 放出力D 操作力D 魔力耐性C
MP(マジックポイント) 2550ポイント
魔法【マテリアル・オーダー】
効果『魔力の物質化』『記録を読み取り再現する』
詠唱【我は万象にして原初を司る、それは幻想の黙示録、無限の叡智そして我は求める者】
保存中『ダークナイト・一式』
不思議だな〜魔力量は一切増えてないのに他がエラい伸びてる。新しい『魔力耐性』とかすっごい増えてるし、姉さんたちの話じゃ一つ上がるのも結構大変だと聞いたが。
ランクアップはポイントがあれば上がるんだが、学園長に言われてポイントには一切手を付けてなかった。
魔法の知識を覚えるための勉学に関して、普通の勉強と対して変わらない。桔梗姉さんと母さんの教え方が上手かったから基礎だけなら割とどうにかなった。
問題は実戦的な基礎を叩き込む方だ。
ただの魔法の練習ならともかく目的の為に今後も『マジックバトル』とやらに参加していく以上は覚えなくてならなかった。
ど素人なオレに対して家族を含め、オレの事情を知った知り合いたちが快く協力してくれたんだが。
例えばカレン姉は組み手全般。
普段使っているというジムみたいな場所に連れてかれて、動き易い格好に着替えさせられるとカレン姉もスポーツウェア姿で現れて笑顔で言った。
「体の使い方から教えてやる。まずは寝技から行くぞ!」
「ちょっと待て、なんで寝技? そこは普通体術っぽいやつからで」
「行くぞ冬夜ぁあああ!」
「ぎゃあああああ!? そこはダメェええええ!?」
貸し切り状態で本当に助かった。
第三者の人が見ていたら、絶対大人のプロレスにしか見えん光景だった。
例えば桔梗姉さんは魔法の基礎。
勉学が一通り済んだところで、実際に魔法の練習を行うことになったんだが。
「うっぷ、き、桔梗姉さん、何でオレ、このポーションっていう、青いジュースを、何杯も飲んでるの?(既に限界なんですが?)」
「冬夜くんの魔力は一般の魔法使いより全然少ないから。実際に魔法を使わせようとしても魔力がすぐ切れてダウンするかもしれないの。これはその為の保険だよ。いっぱい用意したからじゃんじゃん飲んでね?」
「と、とりあえず、今の、お腹の分の消化を待ってくだ―――っ!?」
魔法の練習の筈が一人飲みで吐きかけた。
ちなみにその様子を見ていたミヤ曰く、オレの持っている魔法はそもそもとんでもない量の魔力が必要なわけで、どれだけ高品質なマジックポーションを飲んでも足りないから時間の無駄。
発動の補助は自分がするから問題ないにゃ〜って終わってから言いやがったから、怒りのままにネコミミを引っ張って泣かせてやった。
「みゃ〜でぃーぶいだ〜」
ちなみに親父から教わったりしたが、母さん以上に仕事で忙しいので――省略。
「父さん悲しいわ」
語るほどなかったわけではないよ?
「とうとう冬夜まで魔法を覚えたのか。隠し事せずに済むから個人的には嬉しいが、学園に受かっても受からなくても今後大変だな」
カレン姉たちから聞いた友人の和馬も駆け付けてくれた。
姉さんたちの言った通りずっと前から魔法使いだったそうで、オレにだけ隠していたのを後ろめたく思ってたらしい。
オレの置かれている状況に同情して是非手伝わせてくれと言われて本当に嬉しかった。愛華との関係で勝手に距離を取っていたが、改めて出来た親友だと思ったが……。
「やはり実践あるのみ。この俺の魔法を是非見せようではないか!(バサッ!)」
この後の光景は……言葉にするのはやめた。オレは何も見てない。
「お兄ちゃん、これが失礼してホントにすみませんでした」
「うん、それが君のお兄ちゃんだよ七海ちゃん」
時には和馬の妹の七海ちゃん(オレの妹ではない)。下にはボロボロの本当の兄が踏まれているが、全く見てない。
可愛いけど時々目と押しが怖い女の子。魔法の武器は鎌を使うそうなんだが、持っている姿がまた怖かったので模擬戦は丁重にお断りした。
「あ、愛華?」
「冬夜……ごめん。色々頭の中整理したいからちょっと待って」
「あ、はい」
両手で頭を抑えてその場でしゃがみ込む幼馴染。その後もブツブツ何か言っていたが、みんなそっとしてやれと何故か愛華を慰めていた。
なんか可哀想に見えたからオレも慰めようとしたら、何故か絶望した顔で涙目になっていた。なんで?
「ふ、いい気味だ。友を振った報いを受け―――ゲボっ!?」
和馬だけはザマァみたいなドヤとった顔を向けて、七海ちゃんにアッパーカットをくらわされていたが。
他にも姉さんたちの友達の翼ちゃん先輩も来てくれたが、あの人はあの人で放送禁止用語の塊みたいな人だからこの回想に混ぜるのはやめときました。
*
そんな感じで半年過ぎて、オレは学園の中にある魔法実験場こと試験場に来ていた。
「内容は模擬試合による特別試験となります。それでは始め!」
審判教員の合図でオレと試験管の男の教員が動く。
相手が武器である棍棒のような杖を構える中、オレは一度距離を取ると相変わらず意味が分からない呪文を唱えた。ミヤ頼むぞ?
『おうー、ばっちこーい』
「【我は万象にして原初を司る、それは幻想の黙示録】―――」
「させません!」
棍棒を振るって来るが、肉体をそこまで強化してないようで、オレの身体能力でもなんとか横に飛んで躱せた。
「【無限の叡智そして我は求める者】―――」
相手の攻撃を躱しながら、無事に詠唱を唱え終える。
「【マテリアル・オーダー】―――装備コール。【ダークナイト】―――
『【ダークナイト】―――
全身にミヤの魔力を纏う。それが記録されている装備のデータを読み込んで物質化していく。
鎧付きの黒い格好、黒い銃とダガー。オレの初期装備と言える『黒き暗殺者』の装備に切り替わった。
おまけ キャストトーク
冬夜「受験の選択肢が勝手に消えて、オレの脱出計画も破綻しました」
ミヤ「まぁしたら物語が進まないからねー」
冬夜「ブッちゃけたな!」
花蓮「あのクソ学園長からそれとなく脅しはあったがな。学園に入学して魔法使いを目指さないと今後は保護対象にならないぞってな!」
桔梗「言い方に関しては花蓮の悪意が満載ですが、要するにあのまま街外で過ごすと学園、つまりシルバー学園長の保護を得られないから何かあってもすぐに助けられないってことですね」
花蓮「家ならともかく他所だとアタシたちでもすぐ助けるのは難しいよな」
冬夜「選択肢……やっぱりないな」
これをご都合展開、または強制ルートとも言う。
◯作者コメント
他の作品を含めてフォロー、応援ありがとうございます!
過去の作品はストーリー的に失敗したのが多いので、ちょっと辛い部分がありますが(汗)
特に『オリマス』はストーリーもそうですが、主人公のキャラがブレブレだったので、タイトルが無駄にカッコいいだけの作品になっちゃいました。魔法の数なら間違いなく自分の作品の中でも無駄にトップですが(笑)
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