第4話ー③「ヒーローごっこ」

 ようやく、視界に妃夜と朝が視界に入り、あたしはいつも以上に大声を出していた。


 「ひぃぃぃぃぃぃぃよぉぉぉぉぉぉぉ!」 

 止められない猛スピードで、突っ込んでいくと目の前の朝があたしを両手で受け止めて来た。


 「落ち着け、ゴリラ。森に帰れ」 

 物凄い指の力であたしを完全に動けなくする朝の腕力。 そのおかげで何とか、あたしは自らを制御出来た。


 「ゴリラじゃないし、それやめろ」


 「あははは・・・」


 ようやく、落ち着きを取り戻したあたしは妃夜に話しかけた。


 「妃夜、無事?ごめん、走ってるとゾーンに突入しててさ」


 「ぶ、無事。朝さんが私に水ぶっかけてくれた」


 あたしは無意識にメンチ切っていた。


 「それ以外に、止める方法ある?」


 「そうだけど、やり方あんだろうが!」


 「それより、宮本さんは?」


 「あっ・・・」


 「せぇぇぇぇなぁぁぁぁぁぁぁ!」 

 屍のような表情の茜にあたしの背筋は凍った。


 「やっべ、逃っげろぉぉぉぉぉぉ!」 

 しかし、あたしの動きを封じるように、朝はあたしを捕らえたままだった。


 「放せぇぇぇ!」


 「やれ、バスケ」


 「バスケ言うなぁぁぁぁ!」 

 血走った眼で突っ込む茜の姿は本気でキレているように見えた。


 「や、軽い冗談で、冗談で、って、ぎゃああああ」 

 茜のグーパンは、あたしの鳩尾めがけて飛んできたが。 

 しかし、喧嘩慣れしてない茜の拳より、あたしの腹筋の方が強かったらしく、茜の拳ははじき返されたように見えた。


 「いてぇぇぇぇ!」 

 茜は大声で叫び散らかし、一人うずくまっていた。


 「あははは」 

 妃夜は独り、あたし達の茶番を嘲笑していた。

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