第4話ー②「ヒーローごっこ」

10分かけて、ストレッチを行い、あたしたちはスタートラインに立った。


「じゃあ、妃夜と朝は2キロ、茜とあたしで、3キロになりました。もう少しだけ、走れそうなら、止めるけど、競技会じゃないし、ゆっくりやろう!」


 ストレッチ前より、妃夜と茜はしんどそうな表情をしていた。  「そういうことで、併走しながらで頑張ろう!朝、妃夜を宜しくね」


 「うい」


 あたしのどん!の合図と共に、ゆるーい感じだが、あたしたちは走り始めた。


 あたしと茜が先導する形で、走り始め、妃夜と朝の2人が、後続をついていく形だ。


 頭も視界もクリアだ。今日も絶好調。流石、このあたしと意気揚々と走っていた・・・。 つもりだった。


 少し右脚が重い、ここ数日は合宿の疲れが来ているようだ。 やっぱり、今日は休むべきだったかな?そんなことをしたら、妃夜とは向き合えないだろうな。 

 とにかく、あたしは最低限の動きで走り続けた。 

 本当は妃夜も一緒に走れたらなぁ。ぞれじゃあ、朝と仲良くなれないし、本当のヒーローになる為には、あたしだけでは限界がある。 

 何より、妃夜の成長に繋がらない。だからこそ、あたしは一歩一歩、足を進めていく。 


 あー、考えるのが、鬱陶しい。


 「晴那!ペース落とせ~!」


 「えっ?」


  あたしは脚をいきなり止めた。


 「な、何?」 

 併走していたはずの茜は完全にヘロヘロの状態だった。


 「あ、あんた、なに、ガチではしってんの・・・はぁはぁはぁ」


 「そ、そんなつもりは・・・」 

 手元のランニングウォッチを確認すると距離は3キロ走っていたが、問題は10分も経過していたことだ。 

 ゆっくりのペースで走るつもりが、茜のことを考えずに、いつもの練習位のペースで走っていたのだった。


 「・・・あっ」


 「あっじゃねぇんだよ・・・はぁはぁはぁ」


 「あれ、妃夜と朝は?はぁはぁはぁ・・・」


 「し、知るか、バカせな!」


 「ちょっと、戻って来る」


 「ま、待て!バカせな!」 

 茜はあたしの腕を掴んで来た。


 「な、なんでそこまで拘る。皆を信じるんじゃなかったのか!」


 「そ、そうだけど・・・」 

 茜の正論にあたしは言葉に詰まった。


 「羽月さんのことが好きなら、そう言えよ!それで片付くだろうが!」 

 周囲を気にせず、茜はハイになっていた為、大声で叫んでいた。


 「あたしは決めたんだ。妃夜のヒーローになりたいって」


 「ヒーロー?」


 「それにあたし、妃夜とキスもしたくないからさ」


 「いや、其処までアタシ聴いてない・・・」


 その隙にあたしは持てる限りの力を使い、猛ダッシュで走り始めた。


 「あっ・・・バカせなぁぁぁぁぁぁ!」


 あたしは疾風のように、妃夜と朝の下へと駆け出して行った。

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