第8話『早朝と地図』
ドンドンと扉を叩かれた。
「おい、リク! 起きろ! 」
乱暴な目覚ましで、リクは起きた。
まだ外は暗い。電波時計を見ると、まだ夜の3時だ。
「リク! 」
またノックされた。アダムの声だ。
リクはサイドテーブルから眼鏡を探り当てると、寝巻のままで扉を あけた。
扉の前には案の定、アダムが立っていた。寝巻で まだ眠気眼なリクとは反対に、アダムは いつもの炭鉱夫のオーバーオールで、なんだか すこし興奮気味な様子だ。
「なに? まだ夜だよ」
というリクに、アダムは、「ほら! 外見てみろ! 」と肩を掴んだ。
「外? 」
まぶたを擦って外を見ると──
「あれ? 」
汽車が、陸地を走っていた!
リクたちは急いで運転室に向かった。
「アダム! ゴ機嫌麗しゅう! あっはははは! 」
「リクも、早起き。ひひひ、ひひひ! 」
みんなが寝静まった後でも人形たちは火室に石炭をくべ続けていた。
「マリア、マルコお疲れ様」
リクが言うと、ふたつは、「アタシたち疲れない! あっははは! 」「ボクたち感覚ない。ひひひ、ひひひ! 」と返事をした。
リクとアダムは ふたつが仕事をしている横に座ると、ポケットの中から、 地図やら懐中時計やら、ポイポイ 出し始めた。最後にアダムが運転席の下から木箱を取り出す。開いた中には、コンパスに
ふたりは せっせと天体を観測し、およそ現在の緯度と経度を割り出した。
「とすると、いまいる所が このあたりかな? 」
ノルウェーのトロンヘイムと書かれているあたりを指差し、リクが言った。
「で、南東へ向かってってるね」
「この経路──」
アダムの表情が、一瞬
「どうしたの? 」
「いや」
リクの問いに、アダムは いつも通りの顔で向いた。
「なんでもねえ──にしても」
ニコリと微笑む。
「リク、地図読めるようになったじゃねえか」
「それは、もう、叩きこまれたからね」
珍しく褒められて、リクは胸を張った。
「
「アダム、暴力。ひひひ、ひひひ! 」
「
暴力だ、暴力だ! と駆け回る ふたつを、アダムが「撤回しろ! 」と追いかけ回す。
「はあ、こんな時間なのに、みんな元気っ」
いつもと違うところなんて どこもない。リクは ほっとした気持ちで溜息を吐いた。
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