現役JKダンジョン配信者、ドMにつき攻撃を受け続けていたらいつのまにか有名になっていた件

餅わらび

プロローグ 

2053年。世界中に星が降り注いだ。

それによって生まれたクレーターは異常に深く、その大穴の中にはモンスターと呼ばれる異界の生物が出現し、その大穴はやがて〝ダンジョン〟と呼ばれるようになった。


——それから10年。

未だ探索の終わっていないダンジョンの数々は、日々多くの人々が足を運ぶ地となっていた。


かく言う私、水又みずまたすみれもダンジョンでモンスターを狩ることで生計を立てる〝攻略者〟のうちの1人だ。

もっとも、私の場合はそれと同時に配信もする〝ダンジョン配信者〟でもあるけど。


10年の間にダンジョン研究は進み、各国政府は中にいるモンスターの危険度や構造を推定して〝難度〟を定めるまでに至っている。

最も危険とされるのは1級ダンジョン。そこから数字が大きくなるにつれて難度は下がり、私が今目指している5級ダンジョンは最も難度の低いダンジョンだ。


そんな風に難度の測定技術が進歩した一方で、モンスターに対抗するべく新時代の武器も生み出された。

〝魔術機〟と呼ばれる代物だ。

かねてよりファンタジーに欠かせない存在である魔法というものを、科学の力で実現した人類の叡智の結晶だ。

炎の球を射出したり、電気のビームを放ったり出来るらしい。

そんな魔術機は高価すぎて中々買えたものじゃないけど、最近は量産体制が整ってきているらしい。早く私たち庶民でも買えるようになることを願うばかりだ。


「ふんふふーん♩」


そんなことを考えながら私はダンジョン街を歩いて行き、そのまま目的のダンジョンセンターに入る。


5級ダンジョンセンターとはいえ最新設備が揃っているここは綺麗だ。白くてピカピカしてる感じがいかにも最新って感じで良い。


「こんにちは水又さん。今日は学校帰りですか?」

「はい、今日はこの後企画配信をやろうかと思って!」

「そうなんですね。あなたなら大丈夫だと思いますが、くれぐれもお気をつけて」

「はーい」


私は受付の可愛いお姉さんの所で会員カードをピピッとしてから着替えに向かう。

なんと、このダンジョンセンターでは1人1つの個室を利用できるのだ!

着替えや盗難防止を考えてのことらしいけど、4級ダンジョンみたいな人気のところでは部屋が足りてなくて絶賛増設中なのだとか。

ここ5級ダンジョンはあんまり人気がないから空き部屋の方が多いけどね。

ちょっと寂しい反面、私1人が独占できてるみたいで嬉しくもある。


そんな個室が立ち並ぶ静かな道を進んで行き、自分の会員番号と同じ番号の部屋に入る。


およそ二畳の大きさのこの部屋には、縦長のロッカーが2つある。私は、1つは服を、もう1つは道具や武器を入れることにしている。


「よし、じゃあ早速…」


これから着替えてダンジョンに向かいたいところだが、その前に1つやることがある。


「エイビス、起動」


私はバッグからAI搭載小型ドローン映像機を取り出して空中にポンと投げる。

すると、4本の腕が球体の本体から伸びてきて、その先端にあるプロペラを回転させてその場で浮遊を始めた。

これこそ私の相棒、配信の全てを司る機械、エイビスだ。

なんと金額にして27万円! 必死に働いて稼いだお金で買った正真正銘の相棒だ。


「エイビス、カメラとマイクの準備。ネットにも接続して」

「——カメラ、マイクの起動を確認。インターネットへの接続を開始——成功しました」


私が指示を出すと、無機質な機械音声が返ってくる。


「OK。じゃあMETメットで配信開始」

「——METの起動を確認。続いて、配信準備開始———」


METとは、世界中で流行っているライブ配信アプリのことだ。誰でも簡単に始められる反面、その分人数が多いため有名になるのは難しい。

そして、私のチャンネルの登録者数は1120人だ。有名な人に比べたら雑魚だけど、この数字は良い方だと思っている。なにせ、1桁2桁の配信者がほとんどな世界で4桁を超えているのだから。


「——準備完了。配信、開始します」


直後、エイビスから映像が映し出される。

配信画面をしているのだ。

プロジェクターは壁に光を当てないと映像を映し出すことができないけど、空間出力なら壁に当てなくても何もない空間に映像を映し出すことができる。

つまり、エイビスさえあれば私はどんなところでも自分の配信画面を確認できるということだ!


私の視界と同じくらいの高さに映し出された配信映像を見ながら、私は着替えを始める。


「お、ちゃんと映ってるね。みんな来てくれてありがとう〜!見えてる〜?」


私が尋ねると、映像右端のコメントボードにみんなのコメントが流れてくる。


《やっほー》

《見えてる見えてる》

《あ、今日は着替えからなんだ》

《こんちはー》


「オッケーオッケー。大丈夫そうだね。じゃあこのまま準備していくね〜。ほら、現役JKの生着替えなんて激レアだぞ〜」


《マジ感謝です!》

《もう少し胸があったらなぁ…》

《神神神》

《おお!》


「ふふふ、大いに盛り上がってくれたまえ」


これこそ、私が順調に登録者数を伸ばすことのできた理由の1つだ。


私は自らの価値を理解している。女として生まれたからにはそれを利用しない手はないだろう。

若い女子の、しかも現役女子高校生の着替えシーンなんて滅多に見れるものじゃないからね。


《おー!スカート脱いだ!》

《ガチで着替え見せてくれるんだ》

《録画してます》

《女神女神女神女神女神》

《スポブラ可愛い》


「何したっていいけど、晒すのだけはやめてよね。それ以外なら好きに使ってくれていいから」


私は制服を脱いで下着姿になり、ロッカーから上下が1つになったタイプの白いラバースーツを取り出す。

そして背中のチャックを開けて足から履き、

着終えたら再びチャックを閉める。


「ほーらみんな、スクショタイムだよ〜」


私はカメラ目線でちょっとエッチなポージングをしてみる。


《女神様女神様女神様》

《えっっっっっ》

《これで高校生とか嘘だろ。あ、嘘か》


「ちゃんと現役高校2年生だよ!」


この服は男ウケがいいから着てるってのも確かにある。ボディラインは丸見えだし、おへそだって浮き出てるしね。

だけどそれ以上の価値がこのラバースーツにはある。これは知り合いに特殊加工してもらっているおかげで防刃性能抜群なのだ。

ダンジョンでの安全性も考慮してこれを着ているというわけだ。


「じゃあ着替えも終わったし、そろそろ行くとしますかー」


《今日は何するの?》

《楽しみー》


「あ、まだみんなに今日の予定話してなかったか。ふふふ、見に来てくれたみんな、おめでとう! 今日は人気企画の〝スライム風呂〟をやりたいと思いまーす!!」


《うぉぉぉまじかぁぁ》

《きたーーー!!》

《仕事抜けてきて正解だったわ》

《パンツ脱いだ》

《最高ーー!》

《まじかよっ!?》


「おー、みんな盛り上がってるねぇ。なになに、同接は…230人!夕方なのに結構来てくれてるね!じゃあみんな、楽しみにしててね!」


そう言いながら私はロッカーから一本のシャベルを取り出した。


「レッツゴー!」


私は白い髪の毛をパサァッと手でたなびかせながら、ダンジョンの入り口へと向かった。




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