子猫転生〜美人でクールなお姉さんに拾われ溺愛されています!

二宮まーや

第1話 子猫ちゃん

 


「きゅるる.......ううっ、お腹空いたよ.......」



 現在、野良猫の僕は深夜のガヤガヤとした街を徘徊している。煌びやかな建物の光と忙しなさそうに移動する表情豊かな人間達。お店からは、良い匂いが漂い僕のお腹は更にぐぅ……と鳴ってしまう。お腹が空き過ぎてもう倒れそう……ぐすんっ。



 僕が街を徘徊している目的は、人間達が捨てたゴミを漁って食べ物を探す事だ。野良猫の世界は非常に世知辛い.......常に食べ物と安住の地を探す為に移動する毎日なのだ。



(3日前に食べたアジのお魚……めちゃくちゃ美味しかったなぁ。ゴミ箱漁りはこれだから止められないのだ。残飯の残り物には福がある。腐る前にあり付けたのが運が良かった)



 何故僕に人間の知識が少しあるのかと言うと……人間と会話する事は出来ないが、街で色々な人の話しをこっそりと近付いて横から聞いて見たり、物や人間の文化を見よう見真似で覚えたのです。僕は普通の猫とは違い、元人間の男なのだ。住んでた街は、ここ日本では無く異世界のリンドバーグと言う帝国で奴隷として生きていました。


 人生とは本当に奇っ怪で不思議なものですね。人間として生を終え幕を閉じたと思えば、次に目を覚ましたら、何と白い子猫に生まれ変わってしまったのだから。何故僕は猫へと転生してしまったのか全くの謎です。


 今の僕の身体は脆弱な子猫.......常に死と隣り合わせの運命。まあ、不幸中の中の幸い.......唯一良かったと思える様な事は、自由に身体が動く事くらいかな。自由と言っても身体はまだ幼い。身体は直ぐに疲れるし、あんまり遠出は出来ないし天敵に襲われたらひとたまりも無い。



「キシャアアア!!」

「ヒィッ.......!?」



 僕はいつの間にか、他の野良猫さん達の縄張りに足を踏み入れてしまったらしい。子猫に生まれ変わってから早3ヶ月.......未だに身体の自由がまともに効かない中、猫社会の厳しさを嫌という程思い知った。



(ぐすんっ.......何か食べ物を僕に恵んで下さい.......何でも良いので)



 食べ物を分けてくれないかと懇願して見るが、その答えは予想していたものであった。僕は威嚇する野良猫達に背を向けて全力で走った。



「はぁ.......はぁ.......」



 こうなれば、何処かの飲食店に入りご飯を盗むしかないか.......いや、早まっては駄目だ。窃盗はいくら何でも犯罪に当たる。あ、でも今の僕は猫だからセーフなのか? いや、それでも駄目だ!



「にゃお.......」



 幸い季節は夏、外が暖かいのが唯一の救いでした。本当は昼間に徘徊して、どなたか心優しい人に擦り寄ってお情けを貰うのが賢明かなとも思ったけど、昼間はカラスや車に他の野良猫と言った天敵が等が沢山居る。日中はコソコソと隠れるしか無い。



(あ、あれは.......!? Gか!)



 途方にくれながら歩いていると前方にGが何匹か居たのです! でも、流石にGを食べるのは物凄く抵抗感がありますが、今の僕に取って重要なタンパク源の1つ。本当はこの身体なら離乳食かミルクを飲むのが一番良いのだろうけど、そんな豪華な物は到底飲める筈が無い。贅沢は言ってられぬ!



(やるしか無い.......生きる為にはあいつを何としても喰らう!)



 子猫は音を立てずに、ゴミ箱の近くに潜むゴキブリにこっそりと近付いた。



「にゃーお!」

「カサカサ.......」

「うっ.......何と言う速さだ!?」



 あぁ.......逃げられてしまった。しかし、本当にやばいな.......空腹で今にも倒れそうだ。水で誤魔化すのもそろそろ限界がある。



「くんくん.......むむ!? こ、この匂いは焼き魚か!?」



 僕は匂いに釣られながら、トコトコと歩いて向かった先には、人間達が笑いながらビアガーデンをして盛り上がっていたのだった。夏の風物詩の1つと言えばビアガーデンらしい……これはご飯にありつけるチャンスかもしれない。地面にお零れが落ちてる可能性があるやもしれぬ!



【――――――♪】

【――――――!】



 正直、あの集団の中へと1歩を踏み出すのにかなりの勇気が居る。頭では人間にも良い人は沢山居ると分かっていても、身体が恐怖で震える。まるで産まれたての小鹿の様に僕の身体はプルプルと震えていた。



(勇気を出すんだ! ここで逃げたら僕は本当に餓死してしまう!)



 子猫は震える身体に鞭を打って、人間達の集団に意を決して近付いた。



「あ、あの! その焼き魚を少し.......僕にも恵んで下さいませんか?」

「――――――?」

「―――――――――♡」

「――――――!?」



 ふぁっ.......な、何ですか!? 何で皆さん僕の周りに集まるの!? ううっ.......怖いよぉ。



「――――――♡」



 人が続々と集まって来ました。そして皆さん目が怖いです! 僕は反射的に毛を逆さに立て思わず威嚇してしまいました。



「..............」

「にゃお!?」



 な、何だ!? 何か女性達の輪の中から、リーダーぽい人が近づいて来て、何と僕を抱きあげようとして来たのです!



「――――――?」

「は、はわわっ.......!?」



 思わず見とれてしまいました。長くて清潔感ある綺麗な黒髪、キリッとした目に整った顔、容姿端麗で出る所はしっかりと出たモデルさんみたいなお人だ。そこら辺のアイドルや女優が霞むくらいにこの女性の容姿は美しい。



「や、やめて.......触らないで!」

「..............」

「え、な、何でそんな悲しそうな顔をするのです?」



 むむっ.......これはこっちに来いと言う事なのか? ふむ、どのみち今の僕には選択肢は残されておらぬ。どうせ野垂れ死ぬくらいなら、このお姉さんに身体を委ねて見るのも良いのかもしれない。



「お姉さん、ご飯下さい.......」

「―――――――――♪」

「わぷっ!?」



 僕はお姉さんに抱かれながらこの場を後にしました。








 ◆姫野瑠花ひめのるか視点






 私の名前は姫野瑠花ひめのるか。現在27歳で上席主任統括と言うIT関係の管理職の会社員です。今日は夏のビアガーデンという事で、日頃の疲れを労うという形で社員達との屋外での飲み会です。



「姫野しゃん〜飲んでまふかぁ?」

「真島さん、酔い過ぎです。お酒は程々にしないと駄目ですよ?」

「はぁ〜い♪ ひっく……ふわぁ♡ 姫野しゃん、良い匂いがしますぅ♡」

「こら、どさくさに紛れて胸揉まない!」

「うひひ〜」



 この子は私の部下の真島奈津美まじまなつみさんです。茶髪のボブカットヘアーにパッチリとした瞳の愛らしい女性だ。明るい性格で誰にでもフレンドリーなので、男性社員からの人気は凄まじい。



「姫野しゃ〜ん。なんれ……こんなにも、おっぱい大きいのれふかぁ〜! 痛たっ……!? 頭叩かないでくだしゃいよぉ〜!」

「いい加減になさい。来週から真島さんの仕事量増やすわよ?」



 はぁ……早く帰りたい。会社の飲み会に参加するのは毎度憂鬱だ。私はお酒弱くてあんまり飲めないし……でも、会社の上席主任統括と言う役職を頂いてるからには飲み会に出るしか無い。部長や課長からの【勿論、姫野君も出るよね?】と言う圧力の前には屈するしかありませんでした。あのセクハラ部長の接待をするのが一番嫌です。過去に私をホテルに誘おうとしたエロおやじだ。



「にゃ〜ん……にゃ〜お……」

「あら? 真島さん、今……子猫の鳴き声がしなかったかしら?」

「んん? どこどこぉ? 子猫ちゃんおりゅの?」



 気になって声のした方へと向かって見ると、何とテーブルの下に白いもふもふとした小さな子猫ちゃんが居たのです! 見た目はかなり汚れており、足元もフラフラと覚束無い様子でかなり弱っていますね。



「ふわぁあああ♡ か、可愛い♡ 白いモフモフな子猫ちゃんだぁ♡ 姫野しゃん〜この子どうしますぅ?」

「この子、かなり弱っているわね。お腹が空いているのかしら?」

「姫野主任、この子は恐らくまだ産まれてから間も無いと思います。子猫用のミルクがあれば良いのですが……」

「あら? 貴方酔ってたんじゃないの?」

「あっ……ごほんっ。姫野主任の横顔に酔っちゃいました♡」

「ふ〜ん……あそ」

「ふぁっ……!? まさかの塩対応!? 姫野主任ちょっと塩くないですかぁ? こんなに可愛い後輩を持って嬉しくないのですか!?」

「ごめんなさい。定食に付いてくるパセリはいらない派なの」

「もお〜またまたそんな事言っちゃって〜姫野主任はツンデレですかぁ?」



 本当にやかましい後輩ですね。口を開けばマシンガンの様に1人で一生喋っていそうです。良し、面倒な仕事の案件を真島さんに投げてやろう。



「にゃう……」

「あら、子猫ちゃん大丈夫?」

「がるるっ……」



 私と真島さんで怯える子猫ちゃんをどうしようかと眺めて居たら、次第に周りの社員さん達も集まって来ました。



「にゃーん……!?」

「あぁ、驚かせてごめんね? 大丈夫、安心して」



 瑠花るかは子猫を怖がらせない様に、笑顔で接しようと話し掛ける。白い子猫は身体をプルプルと震えさせながらその場で固まってしまった。



「姫野統括主任、どうしたのです?」

「あ、長島主任。ここに野良の子猫ちゃんが居るのですよ」

「こ、これは……子猫ちゃん相当弱ってますね。命の危険があります……でも、まだ幼いだろうから固形物のご飯は食べれないだろうし……それに親猫は?」

「周りを見るとこの子のお母さんらしき猫ちゃんは見当たらないですね……」

「ふむふむ、もしかして親猫に捨てられてしまったのかな?」



 こんなに幼い子猫を捨てる何て……もしかしたら、何か事情があったのかな? でも、今はそんな事考えてる場合じゃないわね。この子の命を守らないと!



「長島主任、私この子を急いで連れて帰ります。部長や課長には、姫野は急用で帰りましたとお伝えくださいませんか?」

「あぁ、分かりました。僕の方から言っておきますね」

「ありがとうございます」



 さてと、問題はこの子猫ちゃんが素直に抱かせてくれるだろうか? 見た所、人間慣れしてないのか物凄くこちらを警戒しているわね。



「にゃー!」

「子猫ちゃん大丈夫よ。良かったら、私の所に来てくれるかな?」

「にゃお……」

「うん♪ 良い子良い子♪ 私は貴方の敵ではありません」



 まずは頭を撫でて落ち着かせよう。この子はただ怯えているだけなのです。私は敵ではありませんと安心させてあげる必要がある。



「子猫ちゃん、おいで」

「にゃう……」

「うわ、軽っ……!? 子猫ってこんなにも軽いの……!?」



 力の無い私でも、片手で簡単に持ち上げる事が出来ちゃいました。これは一刻も早くこの子にミルクをあげなくちゃ! 本当に餓死してしまう!



 私は子猫ちゃんを抱いて急いで我が家に帰宅しました。





 ―――姫野宅―――





「にゃー! にゃー!」

「よしよし、お家に着きましたよ〜直ぐにご飯を用意するからね♪」



 子猫ちゃんの身体がかなり汚れていますが、まずは先にご飯です。帰りにコンビニで子猫のミルクや猫ちゃん関係の物を片っ端から沢山購入しました。私はペットを飼った経験がありませんので、何が必要なのか良く分かりません……携帯で色々と調べるしかありませんね。



「にゃあ!?」

「子猫ちゃんごめんね、少し大人しくしてくれるかな?」

「にゃ……」



 か、可愛い……♡ はっ……!? 今はそんな事思ってる場合じゃない! 早くミルクをあげなければ! 一旦子猫ちゃんを籠の中に入れて置きましょう。



「えと……猫ミルクは、35℃から40℃の温度が適温なのね。付属の計量スプーンに……」

「にゃーん!」

「ちょっと待って、今ミルク作ってるからね♪」



 ん? あ、粉ミルクを溶かす為に一度50〜60℃くらいまで沸騰させてから冷ますのね。冷たすぎるのも子猫ちゃんの体温を下げてしまう恐れがあると……ふむふむ、これは慎重に作らないとダメね。





 ―――数分後―――





「良し! 温度はこのくらいかな? 子猫ちゃんご飯出来たよ〜今お姉さんが飲ませてあげるからね♪」

「にゃ〜!」



 猫ちゃんを膝の上に乗せてと……どうしよ。ミルクの飲ませ方がイマイチ分からないわね。ここはネットで調べて見るとしましょう。



「なるほど、ここを支えて……」

「にゃふ!」

「あ! そんな急いで飲んだら危ないよ?」

「ごくごくっ……にゃう……ごくごくっ……」

「あらあら、落ち着いて飲んでね♪」



 哺乳瓶を子猫ちゃんの口元へ持って行った瞬間、凄まじい勢いでゴクゴクとミルクを飲み始めました。



「あらあら、ミルクが零れちゃってるよ〜うふふ♪」

「ごくごくっ……」



 はぅっ……♡ か、可愛い♡ 可愛いしゅぎるよぉ♡ 子猫ちゃんが可愛い過ぎて、私が天に召されそうだわ♡ 私の手の平に乗っかるくらいの大きさ……こんな小さいのにお外の世界で、良く1人で生きて居たわね……



「ごくごくっ……にゃう!」

「お口周りにミルク沢山付いちゃったね。お姉さんが拭き拭きしてあげるね♪」



 勢いで子猫ちゃんを拾って来ちゃいましたが、これも良いきっかけです。この子は私がお世話をしよう。自宅に帰るといつも1人で寂しいので、猫ちゃんが居る生活も良いかもしれません。



「今まで良く頑張ったね♪」

「にゃう!」

「え、もうミルク飲んじゃったの?」

「にゃーん!」

「あらあら……ちょっと待ってね♪」



 私は追加のミルクを作って、再び子猫ちゃんに飲ませてあげました。ミルクをあげたからなのか、子猫ちゃんは私に対して警戒心が少しほぐれた様な気がします。



「ごくごくっ……」

「沢山飲んでね♪ 子猫ちゃん、これから私と家族になろうね♪」

「にゃふ!」



 家族が出来るのは素直に嬉しい♪ この子は大切に育ててあげよう♡ 小さな肉球の付いたおてて……一生懸命哺乳瓶を持つ姿がやばい。可愛い過ぎて語彙力が……



「にゃーお♪」

「ミルク美味しかったかな?」

「にゃ〜ん♡」

「よしよし♡」



 どうやら子猫ちゃんの性別は女の子かな? あそこが付いて無いし……それとこの子はなんと言う種類の子猫ちゃんかしら? ちょっとスマホで調べて見よう。



「えっと……あ、これかな? おおっ……スコティッシュフォールド!」

「にゃ〜ん……」

「あらあらぁ♡ 今度はお眠かな?」



 あ、そうだ! 確か飲ませた後はゲップをさせてあげないといけないと書いてあったわね。子猫ちゃんの背中を優しくさすってあげれば……



「はぁ〜い♪ 子猫ちゃん〜ゲップしましょうね♪」

「にゃ……にゃ〜」



 さあ、子猫ちゃん! ゲップをするのよ!



「にゃーん……うぷっ」

「おお!? 良く出来ましたね♡ 良い子でちゅね〜♡」

「にゃー!?」



 思わず頬っぺたでスリスリとしてしまいました。少し子猫ちゃんの身体から排水溝の様な匂いがしましたので、子猫ちゃんを寝かし付ける前にお風呂に入れてあげましょう。コンビニで猫用のシャンプーも買ったので、ネットで調べながら子猫ちゃんを丁寧に優しく洗って行こう。



「子猫ちゃん、お姉さんと一緒にお風呂に入りましょうね〜♪」

「にゃお?」

「そんなに怯えなくても大丈夫でちゅよ〜♡」



 瑠花はルンルン気分で子猫ちゃんを抱いてお風呂場へと向かうのであった。





 ―――お風呂場―――





「子猫ちゃん、どこ行くの?」

「にゃ!?」



 私が服を脱いで裸になると子猫ちゃんは視線を逸らして、壁の隅っこの方へと逃げて行ってしまいました。先程まで私の腕の中で大人しくしていたのに……どうしたのかな?



「はい、子猫ちゃん捕まえたよぉ♡」

「にゃー! にゃお!?」

「えい!」

「わぷっ……!?」



 初めて自分の豊満な胸が役に立ちました♪ 胸が人よりもかなり大きくて、後輩に【瑠花先輩、どうしたらそんなに胸が大きくなるのですか!?】と言われた事も何度かありましたね。私の胸の谷間に子猫ちゃんを挟んだら、子猫ちゃんの動きがピタリと止まりました。



「よしよし〜怖がらなくても大丈夫だからね〜♡」

「にゃう……」



 子猫ちゃんが借りて来た猫のように大人しくなったぞぉ〜♪ 桶に適温のお湯を注いでから、子猫ちゃんをそっと桶の中に入れてあげました。



「あら? 子猫ちゃん、お湯平気なの?」

「にゃ〜♪」

「気持ち良い?」

「にゃう……♡」



 猫ちゃんは水とかが苦手なイメージが私の中でありましたけど、この子猫ちゃんは身体にお湯を掛けても大人しいですね。むしろ気持ち良さそうな表情を浮かべてうっとりとしています。



「貴方のお名前も考えないと行けないね〜どうしようかな」

「にゃ?」

「う〜ん、エリザベスとかどうかな?」

「…………」



 あら? 何だか反応が素っ気ないような気がする。じゃあ、カトレーヌ? フランドール? いや、ダイアナ? ジョゼビーヌとかどうでしょう?



「にゃ!」

「う〜ん、お嬢様系の名前はお好きじゃないのかな?」



 ここはシンプルに可愛い名前にしよう。ならば……モフモフとした手触り、美しい白い毛並み……ふむ。



「もふもふ……もふ……モフちゃんとかどうかな?」

「にゃう!」

「おお! 気に入ってくれた!? じゃあ、これから宜しくね♡ モフちゃん♡」



 良し、凄く単純だけど名前は決まったわ♪ 今日から貴方の名前はモフちゃんよ♡



「にゃ〜ん♪」

「はうっ……♡」



 な、何と無防備な姿なの!? モフちゃん可愛いなぁ♡ こちらにお腹を見せちゃって♡ そんな可愛いらしい姿を見せられたら……こちょこちょしちゃうよ? モフちゃんの身体を綺麗に洗ったら、一度やって見たかった事があるの♪ そう! モフモフとした子猫ちゃんのお腹に顔を埋める事!



「よしよし♡ シャンプーしましょうね〜♡」

「にゃ〜ん」



 この猫ちゃん専用の薬用シャンプーを使います。使い方は先程動画で確認したので、後は実践あるのみ! しっかりと念入りに汚れを落としてあげるからね♡ モフちゃん♡ そしたら、今日の夜は私と一緒にお寝んねしましょうね♪


 今日が週末の金曜日で良かった。明日が休みなのが幸いですね。起きたら朝イチにモフちゃんを動物病院へ連れて行きしっかりとお医者さんに健康状態を見て頂きましょう。



「にゃ〜う♡」

「きゃああああああああああああああ♡♡♡♡♡♡ もう無理! モフちゃん可愛いすぎるよぉ!」

「にゃあ……!?」



 はぁ……はぁ……♡ スマホでこの姿を撮りたいわ♡ 胸がキュンキュンする♡ 多分、今の私の顔は他人には見せられないくらいにニヤニヤとだらけ切っているような気がします。職場では絶対に見せられない様な顔してる。



「モフちゃん、小さい尻尾でちゅね〜♡ ほれほれ〜♡」

「にゃにゃあ!?」

「モフちゃんがそんなに可愛いのがイケナイのですよ? 大人しくしないとこちょこちょしちゃいますからね?」



 仕事でボロボロになった私の心が癒されるぅ♡ 子猫ちゃんが可愛い過ぎて胸がドキドキする。これが……真なる癒しなのね♡







 ◆子猫のモフちゃん視点






「ごくごくっ……ミルク美味しい!」

「――――――♪」

「ごくごく♪ ぷはぁ!」



 助かった……このお姉さんに僕は命を救われちゃったな。この美しいお姉さんから、溢れんばかりの母性と優しさを感じます。



「はにゃ〜気持ち良い♪」

「モ……フ……ちゃん」



 ん? モフちゃん? え、それって僕の事?



「げぷっ……あ、そこ撫で撫で気持ち良い♡」

「――――――♡」



 ふにゅ……このお姉さんの撫で撫でが気持ち良くて思わず目を細めてしまいました。まさに魔性の手だ。細くて華奢な綺麗な指……このお姉さん絶対色々な人からモテそう。



「ふぇ? お姉さん何処へ連れて行くのです?」

「――――――――――――♪」



 ふむ、それにしてもこのお家大きい。うわ、広いリビングだなぁ〜廊下も長すぎ! 一体何部屋あるのだ?



 瑠花に抱かれながら、子猫は目をキラキラと輝かせながら周りを見渡していた。その様子を見ていた瑠花は、うっとりとした表情で子猫を見つめている。



「え、お風呂? ま、まさか!?」

「――――――♪」

「ひゃあっ……!? お姉さん駄目ですよ! 僕はこう見えて内心男の子なのです!」

「――――――?」


 お風呂場へ来たと思えば、いきなりお姉さんが服を脱ぎ出したのです! 服の上からでも盛り上がるお胸のインパクトも強かったですが、お姉さんが裸になるとお胸の全容が全て顕になりました。脱いで見ると想像以上にお姉さんのお胸がデカかったのです!



(で、デカ過ぎやしないか!? お姉さん一体何カップあるの!?)



 たわわに実った大きなお胸……男が見たらむしゃぶりつきたくなる様な形の良い乳房。綺麗なお肌にスタイルも凄く良い。まさにお姉さんは究極の美……傾国の姫君かな?



「―――――――――♪」

「だ、駄目だ。お姉さんをそんな……性的ないやらしい目で見るのはやっぱり駄目!」

「――――――!?」



 僕はお姉さんの腕から抜け出して壁の隅っこの方へと逃げたのですが、結局お姉さんに捕まってしまいました。そして、何とお姉さんが胸の谷間に僕の身体をすっぽりと入れてしまったのです!



「――――――♪」

「わぷっ……!?」

「――――――♡」



 何と言う柔らかくて弾力のある胸なのだ……それに良い匂いがする。暖かい……まるで実家に居るような安心感。



「にゃあ……」

「――――――!?」

「お姉さん?」



 何だか、このお姉さん表情豊かで面白いですね。外ではクールな表情をしていたのに、今では恋する乙女の様な表情を浮かべています。時折、お姉さんの口から涎が出そうになっているのは見なかった事にして置こう……心做しか興奮している様にも見えます。



「モ……フ……ちゃ」



 やっぱりモフちゃんと言っているのかな? そのうち言語もまともに習得出来るようになりたいな。お姉さんと会話出来るようになったら、ちゃんとありがとうって、お礼を言うのだ。



「――――――♪」

「お風呂に入るの本当に久しぶりだなぁ」



 人間時代の頃は奴隷でしたので、身体を洗うのは、ほとんどが川で水浴びでした。湯船に浸かる事が出来るとは……何と言う贅沢な事か。



「この小さな桶が僕のお風呂ですか?」

「――――――♪」

「ふみゃっ!? 目がっ! 目がぁ……!?」

「――――――!?」



 いきなり勢い良く冷たい水が出て来てびっくりしちゃったよ……でも、お姉さんの慌てた様子を見てると何だか微笑ましい気分です。お姉さん可愛い♪



「お姉さん、もう少し暖かいお湯でお願いします」

「――――――?」

「え、あ……ちがっ……あはははは♪」



 お姉さんくすぐったいですよ! あ、尻尾はダメぇ♡



「お姉さん、もう少し優しく……」

「――――――♡」

「え、ちょっとお姉さん!?」



 やばい、このお姉さん我を失いかけてる。乙女としてあるまじき表情を浮かべています! 目をキラキラと輝かせながら僕の身体を洗いながらこちょこちょして来るのですよ! 



「んみゃあああ!?」

「――――――♡」






 ◆姫野瑠花視点





 む、無理……モフちゃんが可愛い過ぎる!



「モフちゃん、良い子だから大人しくしましょうね〜ゴシゴシさせてね」

「にゃ〜ん」



 本当に子猫は小さいね。触ったら死んでしまわないかなと不安になるくらいに華奢な身体です。なるべくモフちゃんにストレスや不安や恐怖を与えずに身体を洗ってあげたい。



「モフちゃん〜あんよから洗いますからね〜♪」



 優しく接しながら慎重に洗って行こう。それとネットで調べた所、子猫ちゃんを洗う時はなるべく桶の中のお湯は変えない方が良いと書いてあったわね。猫ちゃんは環境の変化に弱い……それでストレスを感じて体調を崩す可能性もあるそうです。



「ううっ……どれが正しい情報なのか全く分からないわ。これで大丈夫かしら?」

「にゃお!」

「あ! ごめんモフちゃん! 何処か気に触っちゃったかな?」



 難しい……子猫ちゃんのお世話は難易度が高いわね。と言うか私自身、ペットを飼った経験が無いと言うのが一番の要因かもしれない。



「もっとモフちゃんの事について学ばないとね」

「にゃ〜ん……」

「もお〜よちよち♡ そんな怯えなくても大丈夫でちゅよ〜♡ あ、私の名前を名乗って無かったわね。私は姫野瑠花って言うの♪」

「にゃう?」



 あはは……まあ、子猫ちゃんに人間の言葉が通じる訳ないよね。



「うわ、凄い汚れだ。この猫用シャンプー効果凄いね」

「にゃ〜」

「モフちゃん、もう少しだけ頑張ってくれるかな? なるべく痛くない様にそっと洗うからね♪」



 あぁ……また胸がドキドキして来た。あれ、何だろうこの気持ちは……この感情や気持ち。私にとって未知の領域だわ。とても穏やかで物凄く愛おしい……モフちゃんを見てるとついお世話をしたくなっちゃう。



「にゃ!?」

「うふふ……♡ モフちゃん♡」



 小さな肉球♡ はぅ♡ 子猫ちゃんは全てが小さいです♡ 私の手の平に乗っかるサイズですからね♪ うふふ……モフちゃんの全てが私の手の中に……



「モフちゃん、少しお顔洗うね♪」

「にゃあ!?」

「あ、ごめんごめん! おめめにお湯入っちゃったかな?」



 モフちゃんがお湯に慣れるまで少し待ってあげよう。その間に子猫のお風呂の入れ方をスマホで少し調べて見よ。



「あら、前足を持ち上げてお腹に優しくお湯を掛けてあげるのか……うぐっ、いきなりモフちゃんにシャワー掛けちゃったよ……」



 でも、モフちゃん気持ち良さそうに尻尾ふりふりしてるわね。やっぱりモフちゃんはお湯が平気ぽい? 



「にゃう」

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?」

「にゃあ……!?」



 モフちゃんがいきなり小さなおててを私の手に乗せたのですよ!? か、可愛い過ぎて心臓が張り裂けちゃうよぉ! 常に冷静沈着な私が、モフちゃんの可愛いさによって思わず声を上げてしまった。モフちゃん……何と言う恐ろしい子なの!? こんな気持ちを抱いたのは人生で初めてかもしれません。



「…………」

「にゃう?」



 子猫ちゃんって、こしょぐり攻撃をしたら笑うのかな? 私の中で小さな小悪魔さんが色々と囁いています。



「モ〜フちゃん♡」

「にゃふ……」

「あらあら、そんな逃げようとしなくても良いのに〜うふふ♡」



 モフちゃん、意地悪なお姉さんでごめんね。もう、我慢出来ない! モフちゃんが逃げれない様に私のお胸でサンドイッチしちゃう♡



「あ、手が滑っちゃった〜♪」

「にゃああ!?」

「ほれほれ〜ここが気持ち良いのでちゅかぁ? それともあんよの方でちゅかぁ? それとも〜尻尾でちゅか♡」



 駄目だ……もう止まらない! 私は思う存分にモフちゃんの身体をこちょこちょしてしまいました♡



 ―――瑠花はこの日からモフちゃんを新たに家族として迎え入れ幸せな日々を送るのであった。瑠花は大層モフちゃんの事を溺愛してしまい、段々と過保護になって行くのはまだここだけの話し。

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