海の見える町
第23話
そうしてたどり着いたのは、海が見える崖の近くの町。
セロを乗せた馬車を停め、私は崖の方へ歩いていく。
「あぁ……海が見える………。」
しばらくの間、ぼ~っと海を眺めた。
30分は、そうしていたかもしれない。
飛び降りようと思っていたわけではないけれど…。
「命を粗末にするのはやめなさい!」
突然の声と共に、後ろから体をギュッと抱き締められた。
そのまま振り向いて相手を見ると、この町のシスターのようだ。
「死んではダメよ!」
シスターは私が飛び降りようとしていると、勘違いしているようだ。
「死ぬつもりは……。」
私がぼそりと呟くと、
「えっ!飛び降りようとしていたのでは、ないのですか!?」
「ただ、海を見ていただけです……。」
「まぁ!私ったら、早とちりを。ごめんなさいね。」
慌てて体を離すシスター。
年齢は40代半ばぐらいかな。
「では…なぜ、ずっとそこに?」
「私は……………。」
私には…夢も希望も…やりたいことも、何もない……。
言葉に詰まっていると、
「とりあえず、教会においでなさい。」
と、シスターは私の手を取って言った。
シスターの手…暖かい…。
私は黙って頷いた。
馬車を動かし、教会にやって来た。
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