第5話 君の心
なぎさが「和歌、最近どうしてるの?」と久しぶりに和歌に電話を掛けた。
和歌が「なぎさかぁ。最近暑いよね?外出たくないよね?」と内輪で仰いでいた。
圭祐が「おーい、和歌。何やって居るんだ?」と1階から声が聞こえて来て、和歌が「うん、ちょっと待って。後で行くよ」と夕飯の匂いが1階から匂って来ていた。
和歌がバタンとドアを閉めて、階段を下りて行くと1階には、母親の鈴が「和歌、ご飯よ」と言う錯覚にも似たような顔が、こちらから見えた。
和歌が「お母さん?」と大きな声で鈴を呼ぶが、圭祐が「母さん?居ないぞ。昔、小さい頃に亡くなってから会えなくなったからな」と和歌に声を掛けた。
和歌は「お母さん。そうだね?あれから亡くなって私達を生んで容態が悪くなってしまったから、もうあの笑顔を見る事は無いよね」と少しがっかりしていた。
圭祐が「さぁ、ご飯作ったから食べよう。かぼちゃの煮物美味しそうだろう」と笑顔で返事をした。
和歌は「うん、ちょっと今日はお腹が空かないな。もう、お母さんを思い出すと涙が止まらない」と頬から伝って行く涙を手で拭った。
和歌は、牛乳をコップに入れて、冷蔵庫に牛乳を仕舞った。
テレビではニュースを大きく取り上げて、騒いでいる声が聞こえて来た。
圭祐は、「しょうがない。僕だけおかず冷めちゃうから食べるね」と和歌に話し掛けた。
和歌は、そのまま自室のベッドで横になりながら、携帯の画面を見つめていた。
なぎさから「ね?最近暑いから、海辺のペンション予約したんだけど、3人で行けば2300円割り引いてくれるらしくて良かったら一緒に行かない?」と言う誘いのメールが来ていた。
圭祐にも相談して「良いね。僕も一緒に行くよ」となぎさの誘いに乗って、海辺のペンションに行く明後日の準備を始めた。
土曜日の朝、なぎさが「おーい。こっち、こっち」と手を振り返していた。
圭祐が「お、今日は誘ってくれてありがとうな」と笑顔でなぎさに返事を返した。
なぎさが「良いのよ。どうせ、暇だったし。あれ?和歌は?」と辺りを見回すと、圭祐が「あぁ、和歌も来て居るけど、最近元気がなくて、昔、鈴って母さんを失くして居るから今になって寂しくて辛くなったみたい」となぎさに声を掛けた。
なぎさが「そうなんだ。お母さん、そう言えば居なかったからね?」と圭祐に返事を返した。
圭祐が「そろそろバスが来たみたいだから、和歌行こう」と腕を引っ張ると和歌は「私、やっぱり行かない。お母さんの事を思い出してしまいそうで怖いの」と圭祐に気持ちを伝えた。
圭祐が「そうか。じゃ、僕となぎさで行って来るよ。また何か有ったら言って」と和歌に話をしてバスに乗って行った。
和歌は、真顔でバスを見送った後に家に帰って行った。
その後、なぎさと2人でバスに揺られながら、例の海辺のペンション、夕焼けに到着した。
夕焼けで女性の人から「海辺のペンションで、予約3人になって居ますが、お一人いらっしゃらないのですが・・・」と不思議そうな目で見られていた。
なぎさが「すみません。結局一人の女性ですが、用事が出来て行けなくなってしまったので、予約をキャンセルしたいです」と告げた。
女性から「そうですか。分かりました。24000円でお支払いをお願いします」と頼まれて、2人で代金を出し合って支払った。
その日の夜、和歌からは「どうして、お母さんは私達を残して亡くなってしまったの」と言う複雑そうなメールの内容が届いた。
圭祐が「それは、母さんだって同じだよ。僕達を残して亡くなってしまったとき、母さんだって僕達を残して死にたくは無かったはずだ」とメールを和歌に送った。
和歌は「そうだよね?ありがとう。何だか話したら心の中のモヤモヤが無くなったよ」と言うメールを送り、涙と共に安心して眠りに就いた。
なぎさが「和歌の様子どう?」と聞くと、圭祐が「もう、大丈夫みたいだとさ。良かった」と安心したのか、なぎさも圭祐も眠りに就いた。
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