第90話

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「あ、そういえばお箸入れてたっけ」


家に帰り着く前にスーパーで値引きのお惣菜を食べている時に、ふと気付いてしまった。


酢豚と焼きそば、サラダ巻き。


普段こんなに食べることはないけれど、今日は無性にガッツリと食べたい気分だった。


「美憂もお友達ができたね」


人肌に温まったミルクを飲み干して、背中を叩いていると眠ってしまった。


高木さんと別れ際に、楓君が美憂に興味津々だったのがとても微笑ましかった。


楓君にもこんなに小さな頃があったんだよと、高木さんが言っていたから、尚更不思議だったのかもしれない。


美憂の保育園の連絡帳に、今日の夜の様子を書き込んでいるとふと手が止まる。


「秋…」


まさかまた会うことになるなんて、思いもよらなかった。


部長の件があって、公園からお弁当屋までの距離の半分は無言のまま手を引かれていた。


話もそんなに出来なかったし、また会える保証も無い。

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