第89話

「とりあえず、林田組の動向を探らなければ話は始まりません。身寄りのない未成年に銃を流し、代わりに殺させているようですし」


「そうすれば全ての罪を子供になすりつけられるって?良い話だねぇ」


「誰が林田組に金を借りたかはまだ分かりません。その為、組長からのお達しなんですが……」


「一年ね。一年で密告者スパイを作り出す」


「っ…無理です。そんな短期間で林田組の人間を懐柔できる筈ありません。限られた組としか交わらない、接触出来るかも分からないというのに」


「……ねぇ」


窓から差し込む夕日の、その眩しさに目を細めるのも憚られるほどに、目の前の組員達はゴクリと喉を鳴らした。


「俺を誰だと思ってる?」


顔の前に手を組み、その下は恐ろしく口角が上がっている。


細めた瞳で見上げると、全員深く頭を下げた。


「鳳条秋様、若の仰せのままに」

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