第86話

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「若、お帰りなさいませ」


ちゅうと別れ、事務所に戻ってきた。


相変わらず殺風景なここは、心なしか雰囲気も冷たい。


窓際の真ん中に位置する大きな椅子に座ると、列を成していた組員達は一斉に正面を向いた。


「若、急ぎの件がありまして」


「何かな?」


「例の発砲事件なんですが」


デスクに次々と写真が並べられる。


「どうやら、犯人は林田組の輩だったらしいです」


「林田組?」


「はい。殺した堅気の男に金を貸していたらしく」


借用書のコピーが置かれ、その中身を見るがこれは…


「これは酷い」


この規約内容だと、林田組にしかメリットがない。


裏の世界だからこそ通じる死を仄めかす内容は、堅気の人間にとっては冗談とも受け取ってしまうだろう。


こんなこと出来るわけがないと。

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