第83話

上田さんが去っていくと、美憂は隣の男性に向けて言葉を発した。


「まーまー」


「あ、美憂」


「僕はママじゃないよ〜」


ばたつかせる手を抑えようとしても、ジタバタと興奮気味に暴れる。


「あの…少し抱っこしてもらえませんか?」


「え!そんな、いいんですか?」


「最近色んな人に抱っこしてもらうのが好きみたいなんです」


美憂を優しく男性の手元に近付けると、おそるおそる抱きこんだ。


「ふふっ、喜んでる」


「可愛いなぁ。楓もこんな時期あったな」


「お子さん、おいくつなんですか?」


「一歳です。もうすぐ二歳になります。美憂ちゃん?はどのくらいですか?」


「生後半年でもうすぐ七ヶ月目に入ります」


「そっか〜、可愛いなぁ」


子供が好きなのか、あやし方もよく分かっている。


可愛いを連呼する姿に私もクスッと笑った。

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