第82話

「ありがとうね〜詩由ちゃん。すごく助かったわ」


「いえ、そんな!お先に失礼しますね」


暖簾をくぐって、保育園へ走った。


明日香さんが残りのおかずを詰めて持たせてくれたのを落っことさないように。


ここからそんなに遠くはないから、すぐに着いて私は息を整えた。


「美憂〜!」


「楓〜!」


同じタイミングで重なる声に、私と隣の男性は顔を見合わせた。


同じくらい…いや、少し年上だろうか。


爽やかな外見に、春先にはまだ早そうな半袖の服を一枚着ていた。


「こんにちは〜。美憂ちゃんとっても良い子でしたよ」


「あっ…こんにちは。美憂、偉いね〜」


上田さんに抱っこされている時も、私に向かって手を伸ばす美憂が可愛くて思わず頬擦りしてしまう。


「楓君パパはもう少し待ってて下さいね。今お着替え中なので」


「え、あ、はい!」

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