第79話

「高校の同級生で、久しぶりに再会したんです」


ちゅうは後ろを向いていてその表情は見えないが、声は弾んでいる。


「そうか…若葉君」


「はい」


「若葉君は私の事をどう思っている?」


「会社の元上司です」


「ぶふっ」


俺はたまらず吹き出した。


終始はてな顔で、ちゅうは首を傾げた。


ちゅう曰く元上司の男は、意を決したように口を開いた。


「私はっ、若葉君のことを特別に思っている。会社を辞めたのも何か事情があるんだろう。あの時課長に屈しなければと何度も後悔した」


握りしめた手が震えている。


この男なりの決死の告白なんだろう。


俺はちゅうが座っていた場所に腰を落とし、後ろを振り返ってその様子を眺めていた。


ちゅうの答えなんてとっくに分かりきっている。


笑うとこの男にバレてしまう。


俺は必死に口元を押さえて耐えた。

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