第78話

秋side


驚きで固まってしまっているちゅうは、その大きな瞳に涙を溜めていた。


何も変わっていない。


一人で黙って泣くところも。


変わったのは髪の長さくらいだろうか。


長かった髪は胸より上の長さになり、レイヤーカットで段差が入っている。


「本当に秋?」


「本物だよ。ほら」


ちゅうの手を取って、俺の手のひらに触れさせた。


「本当だ……」


数回瞬きを繰り返して、またびっくりしたように手と交互に俺を見た。


「若葉君!」


ちゅうの手が俺の手を弄って、息を切らした男が現れる。


スーツのジャケットを腕に掛けて、男が近付くとちゅうは立ち上がった。


「はぁっ、はぁっ、遅くなってすまない。その方は?」


俺をチラリと見るその目は見覚えがある。


ちゅうに好意を向けている奴の嫉妬する目だ。

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