第77話

「ふぅ…」


木陰のあるベンチに座って、やっと一息ついた。


風の吹く音と、小鳥の鳴く音だけの空間は、とても居心地が良い。


明るさと暗さの入り混じった夕方の空を呆然と眺めた。


「っ…」


静かな空間だからこそ、さっきのことを思い出した。


あんな良いように言ったって傷つきはする。


蓋をして誤魔化していたはずなのに、何かが溢れて止まらない。


堪えようと必死に力を込めても、涙で視界が滲んでしまう。


「ちゅう?」


私を呼ぶ声がする。


懐かしい、あの人の声が。


「やっぱりちゅうだ」


はっきりとその声が聞こえて、私はゆっくりと振り返った。


「………秋?」


「久しぶり、ちゅう」


歩いて近付いてくるその姿に、私は目を丸く見開いた。

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