第74話

「部長に色目使って、遊びの為に勝手に休んで怒られて退職した、あの若葉さん?」


「図々しい〜。よく戻ってこれましたねぇ」


「弁当屋って、可哀想に」


散々の言われようだな。


事情なんて話せるわけもなく、私はただ黙って暴言に耐えた。


私がもう部外者であることを良い事に、息を吸うように中傷される。


「あのさ、オバさん達」


「は?」


「買わないんだったら邪魔なんだけど。後ろ並んでんの見えないわけ?」


袋詰めしながら睨みつける美梨亜ちゃんに、この三人は少し怯んだ。


とにかく誰かを攻撃したいんだろう。


その標的が戻ってきて、久しぶりのストレス発散といったところだ。


「若葉君?」


聞き覚えのある低い声が聞こえると、遠くから駆けてくる部長の姿が見えた。


「……お久しぶりです。部…武中さん」


危うく部長と言いかけ、すぐに言い直した。

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