第73話

あっという間に来週は来るもので、運搬するトラックに乗り込んで会社のエントランスに弁当を並べていった。


「でっか。姐さんここで仕事してたの?」


懐かしい感じがする。


退職してそんなに経ってはないのに、妙に遠い昔のことのように思ってしまう。


丁度ランチタイムともあって、エントランスには多くの人がいた。


そのほとんどは社員だが、来客の数もとても多い。


「550円でーす。あっーしたー」


面白いほど減っていく弁当は、一時間足らずで半分以上売れてしまった。


ずっと立ちっぱなしの足を軽く叩きながら、次々と販売していく。


「あらぁ?あらあら〜、これ本当なの?」


カツカツとピンヒールの歩く音が複数聞こえて、私の目の前で止まった。


「若葉さん、一流企業から底辺職に転落?」


後ろの二人を従えて、私を指差し高らかに笑った。

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