第67話
「宮村秋」
「宮村君?」
「秋でいいよ」
「じゃあ……秋」
少し恥ずかしそうに呼び捨てにする詩由は、タバコを携帯灰皿に押し潰して、俺に手を差し出した。
「高校生活初日で三人目のお友達ができました」
「三人目?」
「はい、式が始まる前に井川春ちゃんと早川花奏君に話しかけられたんです。この髪も春ちゃんが巻いてくれて」
嬉しそうに笑う詩由の手を握り返した。
柔らかく小さな手と、温かい体温。
詩由に初めて触れたあの時を俺は一生忘れないだろう。
「秋、お弁当のおかず何が好き?」
「お弁当?」
突然の話題に戸惑いながらも、俺は悩む素振りを見せた。
弁当なんて食べたことない。
料理は一流のものを食べなければいけない。
そう教わってきた俺には、程遠いものだ。
「唐揚げかな」
一番無難なものだろう。
当たり障りもない、定番なものを言った。
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