第66話
表情、仕草、目の動きから手癖。
ほんの少しの動揺から嘘を見抜く術を幼少期から叩き込まれたせいだ。
「大丈夫。君の方こそ具合悪いんじゃないの?」
「えーと……仮病、です。校長先生のお話、私がここに来るまでに20分は喋っていて」
「ははっ、それは長い」
「でしょう?」
タバコの煙でぼやけていても、彼女のことは嫌なほどはっきりと見えた。
可愛い見た目とは裏腹に、メンソールの強い匂いが鼻腔を刺激する。
「名前なんていうの?」
自分で聞いていて少し驚いてしまった。
自ら名前を聞くなんて今まで無かったから。
「若葉詩由です」
彼女は近くにあったコピー用紙を持ってきて、丁寧に名前を書いた。
読めないし変わった名前だとよく言われると言いながら。
「貴方は?」
詩由が顔を傾けると、ミルクティーベージュの髪もハラハラと肩から流れていく。
ドクドクと心臓が忙しなく動く。
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