第65話

「あー、これはちょっと違くて」


「一緒」


「は?」


タバコの火を潰して窓から投げ捨てると、彼女は俺の元へやってきた。


地毛なのか薄いミルクティーベージュの長い髪は緩く巻かれ、大きく縁取られた目の中に、色素の薄い瞳がある。


人形のような人だ。これが第一印象だった。


彼女はブレザーのポケットから、シガレットケースとライターを取り出した。


「私もタバコ吸いにきました」


口元を手で押さえて小さく笑う。


慣れた手つきでタバコを咥え、カチッとカプセルを潰しライターの火に顔を近付けた。


伏せた目が妙に色っぽく、俺はただただ彼女から視線をずらせない。


それに気付いて、彼女は色素の薄い瞳だけを寄越した。


「具合、悪いですか?」


「……どうして?」


「さっきから全然動かないから」


本当に心配している。


仕事と環境柄、人の表情を読み取ることに長けている。

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