第61話

「うわ、美味そう。若、先に選んで下さい」


雪那は弁当を並べながら、お茶を汲みに行ってしまった。


「俺はいいから、先に食べ……」


言葉がでかける前に、俺は一つの弁当を手に取った。


「若、それ食べるんですか。男子高校生の弁当見たいっすね、それ」


おかずが全部茶色のもので出来ている。


彩といえば肉じゃがの人参といんげんぐらいだ。


「四季」


「んぐっ、はい」


もう既に弁当を頬張りながら、四季はこちらを見た。


「その弁当屋、誰がいた?」


「30半ばの店主と、若と同じ歳くらいの可愛い人ですかね」


「可愛い人?」


「四季がガン見した後ナンパしたんですよ」


「ナンパじゃなく、正直な感想を言ったまでです」


雪那が湯呑みを置くと、四季はすぐに茶を飲み干した。


俺は弁当の蓋を開け、唐揚げを箸で掴む。


ほんのり甘く香ばしい匂いと、唐揚げにしては少し大きいサイズ。

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