第53話

引き戸に近付くと、向こうから声が聞こえる。


今は休憩中で、ロールスクリーンを下ろしてあるから外から中は見えない。


「お前、もうちょっと優しく叩けねぇのか」


「だって寝てるかもしれないじゃないすか」


「店ん中で誰が寝んだよ」


喧嘩してる…?


私はロールスクリーンを下げたまま、その隙間に手を伸ばして鍵を開け引き戸を引いた。


「あの……」


「だから、ぶっ壊したら面倒なことになるって言ってんの」


「こんなんじゃ壊れないすよ。多分」


「あの!」


「あ?」


二人でバチバチしてるところ申し訳ないけど、そんな大声で言い合ってたら通報されそうだ。


もう既に人がチラチラとこちらを見ている。


「いっ…」


今日は風が強い。


目にゴミが入って、目を押さえると痛みで涙が出てきた。

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