第37話

ビールを豪快に煽る井川春は、私の高校時代からの友人だ。


短いショートカットの髪に、スタイリッシュなパンツスタイルのスーツを着こなしている。


ピンヒールを履いた足を組みながら、残りのビールを流し込んだ。


花奏かなで君は?」


「早川は残業。少し遅れてくるって。あのバカ、昼休憩の時間間違えて二時間も取ってたから、今日の分の仕事終わってないのよ」


春と花奏君は同じ会社で働いている。


部署も隣同士だからか、よく春に揶揄われると言っていた。


早川花奏も、私の高校時代の友人の一人だ。


「そっか。今はどこも繁忙期だし、忙しいよね」


「ちゅうの会社に比べたらそうもないわよ。大企業に埋もれる弱小企業なんて、ただブラックなだけよ」


お冷を持ってきた店員に、春は二杯目のビールと私の分のマンゴーサワーを頼んだ。


メニュー表にあるサワーの中で、気になっていたものだった。


「ありがとう。よく飲みたいの分かったね」


「ちゅうはお酒弱いから、ジュースみたいなのしか飲めないでしょ。ほどほどにしなさいよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る