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第36話

『もしもし。久しぶり、どうしたのよ』


しゅんちゃん、飲み行こ」


『いいけど、早川も呼ぶ?』


「うん」


通話を切って、早歩きで指定された居酒屋へと向かった。


誰かから逃げてるのかのように、時々後ろを振り返りながら歩みを止めなかった。


まだ寒い冬の季節に、裸足にサンダルの人間はいるはずもなく、珍しそうに見る人も少なくなかった。


「らっしゃーせー!」


「「らっしゃーせー!」」


「一名様ですか?」


「あ、えと…」


店員の元気な声にしどろもどろとしていると、先に来ていた春がビールを片手に手を振っている。


「ちゅう!こっちこっち」


「お連れ様いらしてたんですね!お冷お持ちします!」


「すみません、ありがとうございます」


明るい笑顔で、去っていく店員の後ろ姿を眺めて、私は春と向かい合わせの席に座った。

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