第35話

耳鳴りがする。


脳天をつんざくような泣き声が、私の苛立ちと不安を刺激した。


何故だか分からない。


ここ最近あった出来事がフラッシュバックして、私は限界を迎えた。


美憂と暮らすようになってから、私の睡眠時間は数時間を切っていた。


一睡もしないまま会社へ行き、小言を言われ、残業しても保育園のお迎えに行かなければならない。


会社から走って、預かり時間ギリギリにお迎えに行く。


家に戻っても休む暇も無い。


借金のことも考えなければならない。


引っ越しもしないといけない。


たまに家の周りをスーツを着た男の人達が彷徨いている。


そこにあったぬいぐるみと鈴の音が鳴るボールを脇に置いて、私は家を出た。


ほんの少しの罪悪感を残して。

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