第27話

休日出勤も確実にありえるはず。


保育園に預けられない時は?


イベントごとがあった時は?


幼い頃、運動会も歌の発表会も親子参加の芋掘り大会も、全て一人だった。


私の家は仕方がないと割り切ってはいたけれど、やっぱり寂しかった。


私はそれでも、家に帰れば両親がいてくれた。


でも美憂は違う。私しかいない。


「その話、少しお時間頂きたいです」


「なぜだ?こんな機会滅多にないぞ?」


「今抱えてる案件や進行中の企画がまだ沢山あって。前向きに検討させて頂きます。ありがとうございます」


私は深く頭を下げて、急いでデスクへ戻った。


こんなに良い話を保留にするなんて、疑問に思って当然だ。


今子供がいるんです、なんて言えるわけもなかった。


結婚してたことも言ってないのに、余計に混乱させるだけだ。

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