第24話
そういえば一年前、やたらと病院代とかタクシー代の請求を頼んできたことがあったっけ。
食欲が無いから、熱っぽいからっていろんな病院で検査を受けていたらしいけど…
恐らくあれは、妊娠前のつわりだったのかもしれない。
気付いた時には中絶できない日数まで経って、やむなくこの子を産んだんだろう。
とにかくうちは貧乏だった。
そんな家庭で、もう一人また産んで育てようなんて考えられなかったはずだ。
だとしても、自分が産んだ赤ちゃんを人質だなんて…
私はもうあの人達を親とは思いたくもなかった。
自然に強く握りしめた手に、小さな手が重なった。
ふわふわと綿が詰まったような柔らかい手は、とても温かい。
「可愛いねぇ、美憂」
「あぅー」
陽だまりのように笑う、私の大事な妹だ。
自分に姉妹がいる実感はまだ全く湧かないけれど、これが現実だから受け入れるしかない。
元気よく腕を振り回すから服がよく乱れてしまう。
引っ張られて取れてしまったボタンを付け直すと、家のインターホンが鳴った。
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