第21話

夜間まで預かってくれる保育園を探して、その間にこっそりマンションへと戻り、荷物を取りに戻った。


荷物と言ってもそんなに大した量ではない。


額はそんなにないが、それなりに頑張って貯めたへそくりと印鑑、あの日包丁を突き刺されヒビの入ったスマホをバッグに詰め込んだ。


あとは数日分の下着と服と靴。


あまりマンションに戻ったのを知られたくなかったけど、これはバレない方がおかしい。


大した量の物を持ってないからこそ、無くなると部屋が広く見える。


ここにいると胸が締め付けられる。苦しいというか、苦い思い出が蘇ってくる感じだ。


早々に出て行こうと歩みを進めると、ふとゴミ箱に目線がいった。


見なくてもいいのに、私はゴミ箱の中を覗き込んだ。


ラブホテルに入っていく写真が表向きに捨てられている。


腕を絡めて互いに微笑み合いながら、仲良さそうに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る