第20話

「はい、はい、かしこまりました。確認が取れ次第、またこちらから掛け直させて頂きます」


受話器を戻すとまたすぐに電話がかかる。


今週は特に繁忙期で、オフィスの中は皆慌ただしく働いていた。


気を抜くと瞼が下がってくる。


電話の保留音が聞こえると同時に、眠気覚ましのドリンクを開けて喉に流し込んだ。


デスクの上は何本目か分からないほど空になった瓶が置いてある。


『すみません、お待たせしました。先日の企画案なんですが……』


「はい!」


先方の会話が始まると、受話器を肩で挟みながらパソコンを睨むようにしてキーボードを打っていく。


今日も残業は確定だ。お迎え、間に合うかな。


あの日から一週間程が経ち、有給を使ってあの子の手続きを行った。


突然の有給を取り、会社の上司からはあまり良い顔をされなかったが仕方がない。


休んだ分の溜め込んだ分と、いつもの分の量の仕事が今一気に押し寄せている。


懸念していた出生届はきちんと提出されていた。


あの子は『若葉美憂』という名前だった。

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