第15話

「困ってんなら手伝うよ」


さっき、気だるそうにしていた子だ。


いつの間にかレジから離れ、私の後ろにいたらしい。


近くで良く見ると、派手なのに丁寧にされているメイクはもはや芸術だ。


「あ、ありがとうございます」


「うわめっちゃ可愛いんだけど。マジやべぇ」


腕の中を覗き込み、ヤバいを連発する彼女に私はクスッと笑った。


「名前なんて言うの?」


「え?名前…」


名前なんて言うんだろう。


言い淀む私に、彼女は怪訝な表情をした。


「なんか訳あり?」


優しく尋ねられる言葉に、私はゆっくり頷いた。


「オッケー、まぁそれは置いといて。とりまミルクっしょ。キューブ型だと哺乳瓶にポンって入れるだけで楽だよ」


一番上にあった箱を取ると、私に手渡す。


「粉が飛び散ることもないし、わざわざ量計らなくていいからオススメ」

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