第12話

「言質は取った。帰るぞ」


赤髪の男は、手の中にあるボイスレコーダーのボタンをカチッと押して、スーツの内ポケットに入れた。


取り囲んでいた男達は、吸い込まれるように玄関の外へと出て行く。


「そうだ、お前」


「なんでしょうか」


この家にはふかふかのベッドも、暖かい毛布も無い。


寒い冬だろうと暑い夏だろうと、この無駄に大きいタオルケット一枚で寝ていた。


それを雑に丸めてその上に寝かせ、玄関前で振り返り立ち止まる赤髪の男に向き直った。


「宮原秋とは知り合いか?」


懐かしい名前だ。


数年振りに聞いた名前に、内心驚いて目を見開きかけるが、私は首を横に振った。


この人はどこまで私の事を知っているのだろう。


「…知りません。どなたですか?」


あの時良く使っていた、これまた懐かしい言葉を添えて私は微笑んだ。

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