第10話

今まで出したこともない大きな声で、私は勢いよく顔を上げた。


「娘っ…娘なんですこの子」


急いで立ち上がって、ガタイの良い男の腕から奪うように抱きしめた。


想像より柔らかくて、脆くて壊れそうだ。じんわりと温かい体温を感じる。


間違えたら落っことしてしまいそうで、何度も何度も腕を持ち替えた。


赤ちゃんなんて触れ合う機会が無いから仕方ない。


「娘?」


「はい!」


「何故知らないフリをした」


…いや確かに。


自分の娘なのであれば、この状況に焦る素振りを見せるはずだし、あんなに動揺した顔をしていればその反応は当然だ。

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