第9話
少し喉がスッとする煙の匂いが、辺りを包み込んだ。
懐かしい、煙たく鬱陶しいタバコの匂い。
「まぁいい、少々物好きの客がいる。例えばこのガキ一人売れば、お前の親が作った借金分払ったとしてもお釣りが来るぐらい儲かる」
充満する煙に、さっきまで笑っていた赤ちゃんが顔を歪め、弱々しく声を上げて泣き始めた。
タバコなんて毒でしかないのに、子供が吸ったらどうなるかぐらい分かるはずなのに。
今のこの状況も、自分の両親の身勝手すぎる行動も、何もかもが私を焦らせ、苛立たせた。
貯金なんてものはない。
持ってきた財布に入ってるのが、今の全財産だ。
全て旦那だった人と両親への仕送りで奪われてしまった。
明日食べる物ですら買えるか危ういのに、子供なんてもってのほかだ。
「妹とは言え、存在も知らなかったガキなら売り飛ばした方が早い。……うるせぇ、さっさと泣き止ませろ。そこのガムテープで口塞げ」
棚の上に置いてあるガムテープに手が伸びた。
適当に千切って、大きな口を開けて泣く口元に触れかけた時、
「…あっ!あー!そうだっ」
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