第4話

「寒…どうしよう」


街灯も少なく、わずかに降り積もる雪を踏みしめる音だけが聞こえる。


夜出歩くなんてほとんどないから、不思議な気分だ。


「夜ってこんなに暗かったんだ」


当たり前のことは、追い詰められるほど見失ってしまう。


結婚生活は素敵なものではなかった。


家に帰ってくることも少なくて、作ったご飯を捨てた回数は数知れず。


求められる時だけ抱かれて、上辺だけの愛の言葉を囁かれた。


たったの一年で破綻してしまった。


冷たい空気を思いきり吸い込んで、泣かないように空を見上げる。


「とりあえず実家に戻ろう」


いっとき泊まらせてもらって、その後すぐに引っ越そう。


両親は放任主義で自由人だけど、事情を話せば分かってくれるはず。

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