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桃李Side


「お前は行かないのか」

『日向が苦手で』


俺の横に座る異様な雰囲気を纏った女、白鳥來。


転校して来たマリアとコウをみんなが気に入り、屋上に連れて行きたいと言ったから、危険もないようだし許可した。


元々この学院にいる友達と合流すると言ったのもあって、そいつも連れてくれば良いと言ったが、、、それが白鳥來だとは。


この学院では俺たちの次に目立っている。


あまり教室に姿は見せないが、入学初日から黒いロングヘアに黒い目、透き通るような白い肌に綺麗な容姿、男女関係なく釘付けになっていた。


本人は気にも留めていないように歩いていたが、俺も視界には入れていた。


夏稀に調べさせたが特に怪しい情報はなく、普通のお嬢様っぽい。それが崩れたのは俺が理事長に呼ばれて部屋に向かった時のことだった。


「、、、です。、、、しますね」

『あぁ。、、、だがな』


話し声?


『、、、会合のときに』

「そうですか」


会合...?


静かになったと思ったら扉が開き、白鳥来と目が合う。


「......」

『.........ッ』

「!? おい、大丈夫か?」

「白鳥さん!   遠坂くん、支えてくれたんですね」

『くすり、が、、切れた』

「すぐお呼びします。それまで奥に」

「俺が運ぶ」

『......触る、な』

「危ねぇだろ」

「白鳥さん、今は遠坂くんに。遠坂くん、こちらへ」

「あぁ」


今にも死にそうなほどの青白い顔。担いだときの異常なほど細い体。


何を食って生きてるのか。心なしか脈も弱い気がする。


理事長に言われた通り奥に入ると病室のような部屋になっていた。

もしかして、白鳥のためのものなのか?


「こちらへ寝かせてください」

「あぁ...」


まつ毛が長く、目を瞑っていると本物の人形にみえる。


部屋からでると理事長がコーヒーを入れていた。


「白鳥はよく倒れるのか」

「......どうでしょうね。ただ、貴方も見た通り、顔色が健康ではないので」

「理事長は白鳥と親しいのか」

「私の与太話に付き合ってもらってるだけですよ。遠坂くん、君をお呼びたてして申し訳ないのですが、この後白鳥さんの専属医が来ますので」

「...また、出直す」

「助かります」


その後、屋上に戻り、しばらくして救急車のサイレンが聞こえてきた。


「あれー?救急車ー?」

「誰か倒れたんとちゃうか?」

「学校に来るのは珍しいですね」


「......」


救急車が遠ざかると同時に、白鳥のことがひどく気になった。



 




「理事長とは親しいのか」

『…なぜ?』

「あのとき、倒れただろ。理事長と話す喋り方も今とは違った」

『そういうこと、、』


それ以上、返事はかえってこない。答えたくないことは無理に聞くことはしねぇ。


沈黙が流れても不思議と気にならない。俺も無口な方だが、白鳥はもっと無口なように思える。


しばらくして口を開いたと思ったら、


『裕翔と、仲良くできてるの』

「......」


兄貴の名前が出たことに驚きを隠せない。兄貴と知り合い...?


「兄貴を知ってるのか」

『......裕翔も、桃李も、あんたのお父さんも昔から知ってる』


昔から、、、?


どこかで会ったことがあるのか?


親父の友人の娘は会合とかで何回も会ったことあっても、白鳥の名は聞いたことがない。


「どこで会った」

『さぁ』

「......」


不思議な空気。今この時間を握っているのは全て目の前で眩しそうな顔をして、目を顰めている白鳥来。


一度しか会ったことのない、俺の探している人にどこか似ている。


ふと、スカートから伸びている肌を見ると赤くなっていた。


「大丈夫か」

『...なにが?』

「熱、あるのか」


自分の肌を見て、あぁ、と納得したように頷きこちらをじっと見る。


吸い込まれそうな眼、闇...白鳥の眼を見ると闇に落ちそうな気分になる。


『日光がダメで』


太陽に当たると赤くなる、ということか?そういう先天性の疾患は聞いたことあるが...


考えているとご飯が終わったのか夏稀が声をかけに来た


「白鳥さん、マリアちゃんからこれを預かりまして。まだご飯食べてるから僕が代わりに」


長袖のカーディガンをそっと白鳥の肩にかける。


秋だというのに最近暑いからほとんどの生徒が半袖を着ている。


カーディガンは日光よけのためなのか?


『藍沢くん、ありがとう。私そろそろ帰るね』

「下まで送りましょうか?」

「お気遣いありがとう。でも大丈夫」

「そうですか...では、ドアまでご一緒します」

『......』


藍沢は組の情報参謀。


白鳥の纏う不思議な空気、


それからマリアとコウも同様に何かあるとふんで探りたいんだろう。



ドア名前で何か話しているのか、こちらからはあまり見えない。


少しして夏稀が動揺した顔で戻ってくる。


「どうした」

「いえ、少し驚いただけです」

「......」

「今のところ敵でもなく見方でもない、感じかと」

「そうか」


動揺を隠すように少し早口で話す。昔からの癖で俺にしかわからない。


四年前のあのときから全員変わった。


俺は強さを求め、夏稀は.....


満たされていない。


夏稀がこれからどこを目指すのか、幼馴染として見守りたい。


ただ、危なくなれば俺は止める。


たとえ殺し合いになったとしても、、、



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